第21話 Final destination Angkor Wat(最終目的地)

アンコール・トムからアンコール・ワットへは、移動時間は10分少々だった。


熱帯雨林を切り開いた舗装された路を通っていくのであった。アンコール・ワットが近づくにつれて観光名所である証の露店が、所狭しと出店していた。アンコール・ワット全体を空の上から見学する気球も何機か上がっていた。


僕たちは適当なところへチャーターしたタクシーを止めてもらった。ドライバーは車を木陰の下へ駐車した。そこからは、アンコール・ワットの入口までは駐車場から徒歩3分ぐらいであった。


アンコール・ワットへは、僧侶の姿もちらほらと見えてきていた。これは、アンコール・ワットへの巡礼だったのかもしれない。僧侶たちも一般観光客と同じように観光写真を撮っていた。オレンジ色の袈裟に身をまとっていた。この色も何かを意味するのであろうかと思った。僧侶の方が身に着けているものって、いろいろと意味を持つからだ。カンボジアでは、オレンジ色はどんな意味を持つのだろうとふと思った。


まずは、アンコール・ワットの入口へ到着したのであったが、遺跡を包むように堀があり湖に浮かぶ遺跡の姿は、幻想的な雰囲気を醸し出していた。僕と山田、ニャンの三人は、アンコール・ワットの正門へと堀の通路を渡り始めた。石を引き締めた路は、足場が悪かった。というのも石畳がフラットではなく、凸凹しているからだ。この凸凹にも意味があった。敵の侵入を拒むためだとか。フラットならば馬車などですぐに侵入されることはあるかもしれないが、この凹凸ではなかなかスムーズには進まないであろう。そんな路を三人が三人思い思いで渡っていた。ちなみにこの距離は400メートルあるという。その距離を揃って歩き渡り切った。


三人そろってアンコール・ワット遺跡の西塔門入口の前に立った。なんだか感無量という言葉以外、あわないような感じであった。


僕と山田の憧れの遺跡に今、この瞬間、立っていると思うと何とも言えない感情が沸きあがってきた。僕がふと山田の表情を覗き込むと、山田の目は、なんだかウルウルとしていた。その表情を見た僕も思わず、目から涙が溢れそうになっていた。


何に感動しているかというと、世界遺産のアンコール・ワットへ来れたという達成感と、今は昔の建造物に、今、この瞬間立っていられることへの軌跡を体で感じ取っているのであった。


入口の通路を一歩一歩進んでいくごとに、異次元の世界へと導かれていくような空気を生身の体で体感できるのであった。門までの路の両サイドの堀から、水の上をかすめた風が心地よく三人を包んでいった。


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