第11話 Arrive at the hotel(ホテルへ到着)

門番「お帰りですか。どちらへ行かれたんですか。」


僕「食事をとりがてら、シェムリアップの夜の街の見学へパブストリートまで行ってきました。明日のスケジュールを起てていたんですよね。」


門番「そうでしたか。夜は危ないですから、出歩きもタクシーなどを使ったのがいいですよ。安心ですから。」


僕「そうなんですね。タクシーは、道端で拾っても大丈夫ですか。」


門番「シェムリアップでは、たいていのタクシーは特に問題はないですね。タクシーでのトラブルもそんなにないと思いますよ。」


僕「そうなんですね。ありがとうございました。山田君、部屋のKEYを受け取ってきますね。」


山田「俺も一緒にいきますよ。酒井さん、俺を一人にしないでくださいよ。」と山田は僕に甘えてきた。なんだか弟っぽくてかわいく感じた。


僕「じゃ、山田君、一緒に行きましょうか。」と二人でフロントへ向かった。


山田「ルームナンバー9。キープリーズ。」


ボーイ「ルームナンバー9。ヒアーユーアー。」


僕「サンキュー。グッドナイト。」


山田は、フロントスタッフからルームキーを受け取った。シェムリアップに到着して、一日も経っていないが、なんだか中身の濃い時間を過ごせた印象だった。突然のニャンとの出会い、これも何だか偶然ではなく必然のように感じた。実際のところ、そうだったんだけれどもね。


カンボジアは、東南アジア中でも、まだまだ自然の多い地域なので、まったりとした時間が流れている。その感覚が、僕と山田の体をそっと包んでくれた。その空気感を夜の散歩で味わった。


山田「ようやく、ホテルに到着ですね。おいしい食事もしましたしね。」


僕「ニャン君とも出会えて本当にいい時間を過ごせましたね。お腹も満足って感じです。僕は、また、シャワー浴びますけど、先にいいですか。」


山田「どうぞ、どうぞ。その後、俺もシャワーを浴びます。体にまとわりついた土埃を落としてからじゃないと、ゆっくり眠れませんからね。」


僕は、先にバスルームへ入った。先ほどの土埃の道をたどりホテルへ戻ったため、足の裏がかなり赤土にまみれていた。バスタブの中で洗うと黒く泥が落ちていった。汚れたお湯を流し、バスタブへ改めてお湯をはり始めた。その間に、歯磨きや顔のマッサージ、手入れをしていた。年齢を重ねると、こういったメンテナンスは、やはり必要となってくる。

そうこうしているうちにバスタブにお湯がはれた。僕は、ゆっくりと赤土の埃にまみれた体をお湯の中にしずめていった。


こんな時、日本人なんだなって、つくづくと感じ取れる時だった。入浴の文化があることに感謝したいものである。


湯船につかりながら、本日の日本出国からパブストリートのお店でニャンに出会えたことまでをリフレインしていた。ニャンとの出合いは、ほんと、偶然というか必然で出会うべくして出会ったという感じであった。


明日からの数日ではあるが、カンボジアへ滞在することになるが、どんなことが僕たちを待ち構えているのかを考えるとワクワクした。心地よいお湯に体を包まれながら、バスタブも多きめなので足を思いっきり延ばせた。


僕がバスルームから出たころ、山田はうとうととしていた。


僕「山田君、お待たせ。お風呂入りますか。それともこのまま寝ちゃいますか?」


山田「俺、うとうとしていました。もちろんお風呂には入ります。汗を流してすっきりしてベッドにつきたいですからね。」


僕「じゃ、湯船にお湯をはりますね。」


山田「それじゃ、お言葉に甘えてお願いします。」


冷房の効いた部屋には、まったりとした時間が流れた。BGMは、もちろん、クメール語のテレビニュースであった。僕は、お風呂上がりのドリンクをオレンジジュースにした。


ギンギンに冷えたオレンジジュースは、すこしシャリシャリしていた歯ざわりだった。東南アジアの気温で火照った体には、ちょうどいいぐらいの口当たりであった。


 僕が涼んでいると、山田のバスタイムも終わったらしく、バスルームから山田が出てきた。少し日焼けした肌に、水滴がついていて少々幻想的に思えた。幻想的というよりは命溢れる躍動感といった言葉が似あうのかもしれない。


僕「山田君も何か冷たいもの飲みますか。オレンジジュースか、アイスティー、グレープジュースがありますけど。」


山田「先ほどのコンビニエンスストアで買われていたんですね。じゃ、グレープジュースをいただきます。」


僕「もしかして、アルコールが良かったですか。」


山田「俺、あまりアルコールは飲めないんでジュースのが、いいですよね。ビールの炭酸より、ファンタやコーラの炭酸がいいって感じです。いまだに、ビールのおいしさがよくわからないんですよね。そう思うとまだまだ子供ですよね。」


僕「そんなことないですよ。僕もこの年になってもまだビールよりジュースって感じですよ。」


この辺りも僕と山田の食も合うってところだなって思った。


山田「酒井さん、今日は、ニャン君とも出会えて本当にラッキーでしたね。明日のアンコール・ワット探訪が楽しみですよ。いったいどんなヒストリカルな出来事が潜んでいるのか。歴史の時間に習ったことのないことも出てくるんでしょうね。」


僕「そうですね。一般的なヒストリカルなストーリーより、そちらのが楽しいですけどねっていうか、興味深いですよね。」


僕「山田君、寝る時は念のために、蚊取り線香を焚いたまま寝ちゃいますね。大丈夫ですか。」


山田「もちろんです。雨季の終わりなので蚊が媒体の病気も多いでしょうからね。」


僕「そうなんですよ。かかってからでは遅いですからね。何事も予防できることは、予防しといたのが良策ですからね。」


山田「さすが酒井さんですね。準備万端って感じでいいですね。そんなところ尊敬しちゃたり、あこがれちゃいますね。」


僕「それは、年の功ですよ。」


なんだか山田の持ち上げ方に、僕は少々こっぱずかしくなった。二人は、それぞれのベッドに入りながら、時間を過ごしつつ眠りについた。



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