第9話 Miracle Meeting(奇跡の出合い)

山田「酒井さん、そろそろ店を決めてみませんか。俺、この店に入ってみませんか。なんだか気になっちゃって。」


僕「山田君もでしたか。僕も少々気になった店だったので、入ってみようかなって思っていましたよ。じゃ、ここに入って食事でもしましょうかね。」


山田「はい。そうしましょう。」


店のドアは特になくオープンテラスという感じだった。僕と山田は、入口でボーイに案内されオープンテラスの席へ通された。


ミールのメニューとドリンクのメニューを出され、僕と山田は、早速、メニューを見始めた。持ってこられたメニューには写真付きになっていたので、とりあえずは一安心。だが安心したのもつかの間、文字はクメール語になっており、何を書かれているのかは全く意味不明であった。


オーダーはといえば、まず、ドリンクはアジアティックなカクテルにした。僕は、いつものシンガポールシュリング、山田は、カンボジアンカクテルというものをオーダーした。食事は、フライスプリングロール、ボンゴレパスタ、フライドチキンにした。特にカンボジアって感じの料理ではなかった。まずはこの辺りであれば日本人の口にはとりあえず合いそうなところだ。


ボーイにカンボジア料理のおすすめを聞いたが、言葉が通じていないようで、うまく伝わってこなかった。


山田「酒井さん、いまいち、英語がうまく通じていないかったですね。言葉って地域によって本当に差がありますよね。オーダーした料理は大丈夫でしょうか。」


僕「とりあえずは大丈夫じゃない?でも、日本人の口に合うものもあるといいよね。僕が知っているのは、ベトナムのフォーに似たクイティウなんかいいと思うよ。それ食べてみたいんだけどね」


山田「それいいですね。フォーみたいな感じですね。いいじゃないですか。」


僕は、ボーイを呼んで料理をオーダーした。たまたま、その店にもクイティウはメニューにあるようだった。先ほど山田と決めた料理に、カクテルとその料理っていう組み合わせもどうかと思ったが、まぁいいかって感じでオーダーした。それだけでは物足りないためスープのサムローもオーダーした。サムローの具材も何種類かあるようなので無難なチキンにした。


オープンテラス席から通りを眺めていると、楽しく飲みあかしている外国人観光客の7名グループが僕たちの席の前の通りを通過していった。その時に感じたのだが、なんだかマイナスの気を感じ取った。僕が感じたのと同時に、山田も何かの気配を感じ取ったようだった。


僕「山田君、今何かを感じました?僕は、先ほど通過した7名のグループの中にいた女性にマイナスの気を感じましたよ。」


山田「俺も同じです。俺が感じ取ったのは、物哀しさを含んだマイナスのオーラーというか気を感じちゃいました。」


僕「カンボジアもいろいろと大変な過去のある国だから、そういうこともあると思うよ。でも、先ほどの女性についているものは、カンボジアでのものでなく、かなり前から彼女についてきているみたいだったね。」


二人でそんな話をしていると、僕は急に寒気がしてきた。山田がそんな僕の変化に気が付いた。


山田「酒井さん、大丈夫ですか。なんだか寒気がしているんじゃないですか。」


僕「山田君、よくわかったね。急にだったからね。何かが近づいてきているとしか思えないよ。僕が急に寒気に襲われるときって、そういうときが本当に多いんだよね。」


山田「そうなんですね。」


僕「まぁ、その土地その土地には、過去から現在に繋がる歴史があるからね。その歴史の中には、その時代その時代の人の思いが積み重なっていますからね。その思いは、プラスもあれば、マイナスの思いもありますから。人の思いは、時空を超えて伝わっていますからね。」


山田「そういうもんなんですね。俺は、まだまだその空気は読み取れませんよ。修行が足りませんからね。」


ボーイ「お客様、大変お持たせいたしました。ご注文のカクテルをご用意いたしました。シンガポールシュリングは、どちらのお客様でございますか。」


そのボーイは、流暢な日本語で対応してくれた。僕は、なんだか縁がありそうな印象を受けた。


僕「シンガポールシュリングは、こちらにお願いします。カンボジアンカクテルは、連れの男性へお願いします。」


ボーイ「かしこまりました。」


僕「それはそうと、ボーイさん、明日、僕たちは、アンコール・ワットへ行こうと思っているんですが、いい観光ルートってありますか。」


ボーイ「お客様は、どちらからシェムリアップへお越しいただいたんですか。」


山田「俺たちは、今日、日本から来ました。」


僕「先ほどシェムリアップに到着したばかりなんですよね。カンボジアは初めてなんで、右も左もわからないんですよ。」


ボーイ「そうなんですね。アンコール・ワットは、アンコール・ワットを中心とした遺跡群なんです。その大半がシェムリアップ近郊に点在しているんです。有名な遺跡としてはアンコール・ワット、アンコール・トム、タケウですね。これらの遺跡は圧巻ですよ。悠久の時代の流れを感じられると思いますね。ぜひ、行ってみてください。」


僕「ありがとうございます。現地の方のアドバイスが参考になります。ボーイさんは、アンコール・ワットに詳しいんですか。」


ボーイ「そうですね。日中は、アンコール・ワットのガイドもしていますからね。大学では、アンコール・ワット遺跡群の研究を日本の大学の方と一緒にしていました。」


僕「そうなんですね。良ければ、明日は、休みならば、ぜひ、僕たちのガイドをお願いしたいのですが、いかがでしょうか。」


山田「そうですよ。こんなにアンコール・ワットに詳しい方が一緒ならば、俺たちのツアーも鬼に金棒ですね。ぜひ、よろしくお願いします。」


ボーイ「そうですか。ちょうど、明日は学校も休みで店のバイトも入っていないので、いいですよ。」


僕「あ、話はきまりですね。よろしくお願いします。」


山田「よろしくお願いします。」


ボーイ「こちらこそ。」


こんなとんとん拍子に決まるなんて、不思議な気分だった。というよりは、やはり最初に感じ取った空気は本当だった。


僕「ガイド料金はきちんと支払いしますのでよろしくお願いします。」


ボーイ「いいえ、ガイド料金なんていいですよ。僕も趣味のようなもんなので。それに海外からのお客様に少しでもカンボジアのことや、アンコール・ワットのすばらしさが伝われば、僕はそれで満足ですよ。」


僕「まぁ、そういうわけもいかないので、寸志は受け取ってくださいね。」


ボーイ「ありがとうございます。今日の仕事は、間もなく仕事が終わるので、お席を一緒にしてもいいですか。その時に、明日のスケジュールを決めたいとおもいますので。」


僕「ぜひ、こちらこそ、よそしくお願いします。」


山田「こちらからお頼み申し上げたいって感じですよ。よろしくです。」


ボーイ「では、仕事がありますので、後程でよろしくお願いします。23時には終わりますので。」


僕「後、30分ですね。お待ちしてますね。」


ボーイは、残りの仕事へと戻っていった。かなりのラッキー度あいだった。旅ってこういう偶然の出会いがあるのがいいなと改めて感激していた。山田も僕と同様に思っている様子だった。


ボーイの仕事終わりを待つ間、僕と山田は、オープンテラスで、通りを行きかう人々の波を見ていた。今、この時間に、日本人である僕と山田が、日本を離れ、異国の地、カンボジアでこうやって、オープンテラスで夜を過ごしているとは、本当に不思議に思えた。


山田「あのボーイさんと偶然に入った店で出会えて、一緒の席をするなんて、本当に人との出合いって不思議ですよね。フライト中では思ってもみなかったですよ。」


僕「そうですよね。これが、旅の醍醐味ですよね。というよりは、一瞬先には何が起きるとはわからないものですよね。運命って本当に不思議ですよね。」


山田「俺と酒井さんとのハノイでの出会いも本当に偶然の積み重ねですからね。」


僕「本当に面白いよね。人生って。」


店のBGMは、シェムリアップで流行っているであろう曲が流れていた。その曲が、東南アジアの湿度の高い空気感と絡み合って何とも言えないハーモニーを醸し出していた。

なんとなく通りを眺めていると、僕のほほを人肌の温度の風が「ふうっ」とかすめていった。


その感覚は、僕にとって何とも言えない心地よさを覚えた。心地よさが体中からあふれ出すような感覚になった。山田も夜のパブストリート通りを眺めて、何を感じ取っているのだろうか、と僕はふと思った。


その時、山田が「酒井さん、なんだかこの雰囲気、俺、好きですよ。東南アジアの何とも言えないこの雰囲気。時間の流れであったり、まったり感がすごく好きですよ、俺。酒井さんが、東南アジアでは居心地がいいって言われるのが、わかる気がします。」


僕「そうでしょ。この時間の流れとまったりとした雰囲気が、僕の心、体を癒してくれるんですよね。」


山田「俺、なんだかわかりますよ。その気持ち。」


僕は、山田とたわいのない会話をしていたところ、先ほどのボーイが、僕たちの席へと近づいてきた。こちらへ向かっているその彼を見ていると、彼のオーラが、すごく神々しく見えてきたのである。


山田「酒井さん、ボーイの彼ってなんだか雰囲気っていうか持っている気が、普通の人たちとは違いますよね。」


僕「山田君も、そう思ういますか。僕が、彼を見ていると、薄紫色のオーラを彼から感じ取れるんですよね。」


山田「酒井さんのパワーって、やっぱ、すごいですよね。そんなところまで見えちゃうんですよね。」


僕「見えるっていうよりは、感じ取れるんですよね。頭の後ろ側で映像が、スライドのように映像がどんどんでてきちゃうんですよ。」


山田「そうなんですね。俺はちょっと違いますね。目の前で見えちゃうんですよね。」


僕「そうですか。その感じ取られ方って、いろいろなパターンがあるんでしょうね。その人その人それぞれでしょうね。」


こんな他愛のない話を山田としていると、あっという間に時間が経っていた。先ほどのボーイの仕事の終了時間になったようで、ボーイが、僕たちの席へ向かってゆっくりと歩いてきた。


山田「先ほどのボーイさん、仕事が終わったみたいですね。こちらに向かって歩いてきていますね。」


僕「そうだね。彼からどんな話が聞けるのか楽しみですね。」


山田「俺もすごく楽しみですよ。彼、ちょっと霊感というかなんだか不思議な感覚がありそうだし、それにいろいろな経験してそうですしね。」


ボーイ「待たせいたしました。」


僕「いえいえ、こちらこそ、仕事終わりで疲れているところ、申し訳ないです。お時間を割いていただきまして。」


山田「本当にありがとうございます。」

といった挨拶を改めておこなった。

ボーイのドリンクと僕と山田のドリンクを改めてオーダーした。


僕「改めまして自己紹介をしますね。僕の名前は、酒井拾膳、こちらの彼は、連れの山田優也君です。よろしくお願いします。」


ボーイ「こちらこそよろしくお願いします。僕は、カンボジアの大学で国際関係の勉強をしています。これから伸びる母国のカンボジアのために、少しでも役に立てばと思って大学で勉強しています。日本のODNにもすごく感謝しています。その力のお陰で、カンボジアも少しは便利になってきています。それに、カンボジアと言えば、アンコール・ワット遺跡群なんですが、こちらの補修工事もそれらの資金援助のおかげで、進んでいます。本当にありがたい次第ですね。」


僕「失礼ですが、お名前を伺っていなかったんですけど。お名前は?」


ボーイ「ニャン チャット シェムリと言います。友達は、みんなニャンって呼んでいます。お二人もニャンと呼んでいただいて大丈夫ですよ。」


僕「それじゃ、お言葉に甘えてニャン君と呼ばせていただきます。」


山田「俺は、年も近そうだし、ニャンって呼んでいいですか。」


ニャン「いいですよ、山田君は、大学生ですか。」


山田「そうだよ。俺、大学四年だし。年齢が近いよね。」


ニャン「近いですね。山田君は、ちなみに今、何歳ですか。」


山田「俺ですか。21歳です。ニャンは?」


ニャン「僕は、22歳です。」


僕「自己紹介はこれぐらいにして、カンボジアのこと、シェムリアップのことをニャン君にいろいろと伺いたいんですよね。いいですか。」


山田「俺もシェムリアップのことや、明日行くアンコール・ワット遺跡群のことを聞きたいですよ。」


ニャン「お二人は、カンボジアへすごく興味をお持ちなんですね。カンボジア人の僕としては、すごくうれしい次第です。母国にこんなにも興味を持っていただけて。」


僕「アンコール・ワット遺跡群は、世界遺産にもなっているし、歴史があるから悠久の時間の中で、どれだけの物事を見て来たのかを知りたいんですよね。というかその空気感を感じ取りたいんですよね。」


山田「俺も酒井さんと同じですよ。どんなヒストリカルな出来事があったのか知りたいって感じですね。」


ニャン「そうですね。アンコール・ワットは非常に歴史が古い遺跡なので、いろいろと物語はありますね。ちなみに明日は、僕は休みなのでよければ、アンコール・ワットを案内しましょうか?」


僕「是非ともよろしくお願いします。」


山田「お願いします。」


ニャン「実は、お二人も気が付いていらっしゃると思うんですけど、僕、霊感があるんですよ。二人をお店で見かけたとき、霊感の強い人たちだなって思ったので、お声がけしたんですよ。」


僕「そうなんですね。僕もニャン君が独特な雰囲気のある方だって思いました。同じ空気感っていうか同じ匂いを感じ取れたんですよね。」


山田「俺もそう思いましたよ。ニャン君がなんだか酒井さんと同じ空気感をただよわせているなってね。」


ニャン「そんな雰囲気を醸し出そうとした感じはないんですけどね。」


僕「カンボジアって、パブリックランゲッジはクメール語でいいですか。文字もアルファベットなどとは違うから、僕たちにはわからないですよね。」


ニャン「共通語はクメール語ですね。外国の方が、クメール語の文字を覚えるまでには、なかなか時間がかかると思いますね。日本の漢字も同じような感じですよね。」


僕「そうでしょうね。クメール語は、文字表記が独特ですからね。」


山田「それはそうと、明日の予定なんですけど、どうしますか?」


ニャン「よければ、僕がアンコール・ワットのコースを提案しましょうか。アンコール・ワット遺跡群の観光ガイドの国家資格もありますので。遺跡の周りには似非のガイドもたくさんいますからね。観光客の方とトラブルが結構あります。」


僕「そうですか。そうなんですね。ニャン君は国家資格を持っているんですね。それはすごいですね。ニャン君は、いろいろと興味深いことを知っているような気がしますね。実は、今回、カンボジアへきたのは、仕事も絡んでなんですよ。僕が日本で風水の仕事をしており、その仕事関係なんですよね。後は、アジアのパワースポットを紹介するって仕事もしているんですよね。」


山田「俺は、そんな酒井さんにくっついてきちゃって感じなんですよね。」


ニャン「酒井さんと山田君は、同じ空気感がありますよね。」


僕「ニャン君もそうお思いますか。僕と山田君は昨年、ハノイで偶然に出会ってからの仲なんですよね。初対面の時から、僕もそう感じてましたよ。」


山田「俺もですよ。なんか、同じ空気感って感じでしたね。」


僕「それからの付き合いなんですよ。」


ニャン「そうでしたか。ところで、明日はどの遺跡へ行かれる予定なんですか。」


山田「俺たちは、明日は、アンコール・ワット、アンコール・トム、タケウぐらいは回りたいんですけどね。ルートはどうですか。」


ニャン「その遺跡でしたら、ゆっくりと回れますよ。時間もゆっくりと取れますので、遺跡を、その遺跡の空気感をじっくりと味わえると思いますよ。そのプランに、あと一か所ぐらい追加してみてはいかがでしょうか。せっかくなので、少しでも多くの遺跡を見て、感じ取っていただきたいものです。」


僕「それはよかったです。僕たちのステイホテルは、ザ コットゥネイチャーリゾート&スパホテルというところですよ。知っていますか。」


僕は、ニャン君にホテルの名刺を見せた。


ニャン「このホテルは、僕の叔父が働いてしているホテルですよ。」


山田「えっ、まじ?」


僕「本当ですか。これって、すごい偶然ですね。びっくりですよね。旅ってこういう偶然が、本当に起こるんですよね。」


ニャン「これで決まりですね。僕もこのホテルの場所へよく行くのでわかりますよ。」


僕「よかった。じゃ、明日の集合場所はホテルのフロントでってことで決まりですね。」


山田「こんなに偶然が重なり、トントン拍子に決まりだなんてびっくりですね。本当、こういうことってあるんですね。まさに真実は小説より奇なりですね。あの言葉はこういったことを表すんでしょうね。」


僕「僕と山田君が昨年、ハノイで出会った感じですね。旅行って本当に不思議ですね。」


ニャン「僕も、びっくりですよ。日本からお越しいただいた方と知り合え、その上、叔父のホテルに滞在していらっしゃるなんて。叔父は、ホテルの支配人をしています。経営者は、日本人の方ですから。」


僕「ガイドブックにもホテルの紹介で、安心してくつろげるって評価でしたからね。」


ニャン「そうなんですね。それはうれしい限りです。」


山田「俺たち、結構前からホテルは抑えていましたもんね。」


三人は、意気投合した感じをそれぞれが受け取った。旅のミラクルが、ここでも起きた感じだった。僕は、この三人の出会いがどのよう化学反応を起こすのか楽しみになった。ニャンも第六感というか、霊感がある空気感をもっている。ニャン自身もそれを認識している。この出会いは、面白くなりそうだった。


また、今回のステイ先のホテルが、ニャンの叔父さんの勤務先とは何とも奇遇である。これも何かの縁だとつくづく感じた。日本を離れ、この異国の地、カンボジア シェムリアップでこういった出会いがあるとは思いもしなかった。人の出会いは、どこでおきるのか本当に分からいものだとつくづく感じた。


このタイミングでニャンは、この店でこの時間のシフトで勤務していただけなのに。僕たちもまた、この店に入っただけは、こんな出会いはなかったと思う。ニャンが僕たちの席のオーダーを取りに来てくれて話した。これも僕たち三人に秘められた運命のストーリーなのだろうか。この時間、この場所で出会えたから、お互いの存在を知りあえた。この奇跡的な出会いって、本当に不思議だと思った。もしも少しの時間のズレが生じていたならば、お互いの存在には、気が付いていなかったと思う。そう思うとこの出会いには感謝したい。


僕「じゃ、ニャン君、明日のアンコール・ワット遺跡群のガイドを改めてお願いしたいとおもいます。」


ニャン「わかりました。明日は天気も良さそうなので、きっと遺跡巡りも順調に進むと思いますよ。」


山田「ニャン君の日本語には安心ができますね。明日からのアンコール・ワット遺跡群の探索も楽しみになりますね。」


僕「そうしたら、明日、朝、ステイ先のホテルのフロントロビーまで、ニャン君、お越しいただけますか。」


ニャン「わかりました。もちろんですよ。ある程度、僕の方でもルートを確認しておきますね。車は、トゥクトゥクにしますか。それともタクシーチャーターにしますか。」


僕「そうですね。タクシーチャーターとトゥクトゥクではどちらがいいと思いますか。山田君?」


山田「俺はどちらでもいいですが、トゥクトゥクだったら車に荷物を置いておけないですよね。それならタクシーチャーターのが、クーラーも効いていいような気がしますね。」


ニャン「山田君の言う通り、僕もこの時期はタクシーチャーターのがいいと思います。」


僕「これで決まりですね。タクシーチャーターしましょう。ホテルでチャーターできますからね。」


山田「ホテルに戻ったら、ニャン君の叔父さんにお願いしましょうかね。」


ニャン「では、今から叔父に連絡を取り車の手配をしますよ。」


僕「本当ですか。助かります。お願いできますか。何から何まで本当にありがとうございます。」


山田「酒井さん、ラッキーですね。よかったですよ。本当に。こんなことってあるもんなんですね。」


ニャンは、その場で早速、携帯電話で僕と山田のステイ先のホテルの叔父さんへ連絡を取ってくれた。


クメール語で話していたので、どんな会話だったかはわからないが、これで一安心という感じだ。ガイドもしていただき、タクシーのチャーター手配していただけるとは、何ともラッキーなことだ。この出会いに改めて感謝であった。


ニャン「実は、今晩、僕は店でのバイトの予定ではなかったんですよね。昨晩、オーナーから明日人が急遽足りなくなり、追加でシフト入ってくれって頼まれたから、今日、この時間で勤務していたんですよ。本当に今日の出会いは、奇跡としかいいようがないんですよね。」


僕「そうだったんですね。これは出会うべくして出会ったって感じですね。」


山田「まじですか。ほんと、改めて驚きですね。この出会いって、まさに酒井さんがおっしゃった会うべくして出会ったって感じですねよね。」


ニャン「この出会いの先にどんな出来事が待っているのか楽しみですね。こんな出会いっ


ニャン「取材ですか?何の?てそうそうあるものではなく、本当に珍しいと思いますよ。僕も初めてですよ。この店は割と観光客のお客さんが多いんですけど、酒井さんと山田君との出合いのようなのは初めてです。」


山田「酒井さん、今回も日本を脱出して、取材に来たかいがありましたね。」


僕「明日からのアンコール・ワットでも、なにかおもしろいアクシデントが待っている感じですね。」


山田「酒井さんは風水のお仕事をされていてその取材ですよ。後、本の出版なんかもされていますよ。」


ニャン「そうなんですね。すごいですね。僕のガイドで酒井さんたちのお役に立てるといいですけどね。」


僕「まぁ、取材もこの奇跡の出会いで、もう始まっていますよ。今まさに。」


山田「そうですね。今回のアンコール・ワット遺跡探訪もこの奇跡の出会いで、はじまりですね。なんだかわくわくしちゃいます。」


僕は、山田とニャン君と三人で話していた時に、ニャン君を見ているとなんだか、ニャン君の周りのオーラーが一瞬、ゴールドに輝きを増してきたのを感じ取った。ニャン君のチャクラが僕と山田のチャクラと反応したように思えた。この化学反応は、面白いことが必ず待っている予感がした。その予感が明日、まさに起きるとは、この時三人は思ってもみなかったことだ。


僕「ニャン君、明日はよろしくお願いしますね。ご負担をかけますけど。」


ニャン「いえいえ、僕も明日は休みですのでご心配なくです。こちらこそ、明日はよろしくお願いします。」


山田「ニャン君、明日、よろしくな。」


明日朝は、ホテルロービーで、8:00に待ち合わせ約束とし、店の前でニャンと僕たちは別れた。僕はなんだかニャンが気になり、ふと振り返るとニャンはもう見えなくなっていた。カンボジアの人は歩くのが速いんだなって思った。道を知り尽くしているニャンなら、自宅までの近道もわかっているだろうから、まぁ、当たり前といえば当たり前だが、それにしても見えなくなるのが速い感じを受けた。


山田「ニャン君、もう姿が見えなくなっていますね。歩くのが速いんですね。」


僕「そうですね。彼は地元だから近道や抜け道をたくさん知っているからでしょうね。」

と、僕は山田の会話を交わしていた。


明日はいい取材の題材が出てきそうで楽しみになった。この三人の出会いから、今は何かわからないが、もうすでに始まっているような気がした。


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