第4話 Accidental Reunion(偶然の再会)

僕と山田は、搭乗口行きのバスに乗った。3分ぐらい移動した場所に離れ小島のようなターミナルが現れた。ということは、帰国の時もこのターミナルということになりそうだ。

帰国日は、香港到着からトランジットの時間は1時間30分ぐらいしかないため、下手をすると香港でバタバタしそうな感じと、その時思った。実際、そうなろうとはその時は思ってもみなかった。


山田「酒井さん、なんだか隔離された気分ですね。」


僕「そうだね。でも、かなり新しいようで、きれいだよね?」


僕「山田君、出発まで時間も2時間30分ほどあるからお茶でもする?ちょうど、スターバックスもあるからそこにしようよ。」


山田「了解です。他の国のスターバックスってメニューとか違うんですかね?」


僕「ドリンクなんかはほとんど、同じだと思うよ。フード類が多少違うかもね。」


僕と山田は、席を確保した。それぞれ荷物もあるため、一人が荷物番をした。国際空港内といえ、やはり自分の身は身分で守るしかないから、緊張感は必要だ。


僕「山田君から、先にドリンクを買ってきてもいいですよ。僕が荷物を見ていますから大丈夫ですよ。」


山田「わかりました。それじゃ、酒井さん、お先に。」


僕は、空港内をなんとなく眺めていた。なんだか、今、香港にいるのが不思議だなって思ってしまう。僕は旅行をするといつもそう思うのだが、一日経つとこんなにも簡単に別の国へ来れるんだなってね。


僕と山田が立ち寄ったスターバックスカフェは、空港内の中心部にああり、僕の腰ぐらいまでの壁で仕切ってある簡単なつくりになっている。旅行者のホットひと時の時間を与えてくれるような印象だ。僕と山田が座ったテーブル席は空港内を見渡せる感じである。席の近くには、SWATCHの店がすぐ目の前にあった。SWATCHの時計なんて、なんだか懐かしいと思った。僕が大学時代に流行っていた時計だからだ。その隣の店は、香港のお菓子などの土産物を売っている。仕事先へのお土産を買っとこうかと思ったが、今回はカンボジアが目的地だから、香港のお土産では、ばつが悪い。そんなどうでもよいことを考えていたところ、山田が戻ってきた。


山田「酒井さん、買ってきました。お待たせしました。やはり米ドルを用意していてよかったですよ。メニューの表記も米ドルでしたから。」


僕「そうでしたか。それは良かったですね。米ドルは万国共通ですからね。やはり強いですよね。じゃぁ、僕も買ってくるね。」


山田「了解です。どうぞ、ごゆっくり。俺が酒井さんの荷物もいてますから、任せてください。」


僕「ところで、山田君は何を買ったんですか。」


山田「トロピカルアイスティーとドーナッツです。なんだかお腹すいちゃって。」


僕「それはいいですね。なんだかいいかんじゃないですか。僕は、さて何にしましょうかね。」と言いい席を立つとレジへと向かった。メニューは英語表記だったため、すんなりとオーダーができた。それに写真もあったからね。僕は、とりあえずオレンジジュースとフレッシュフルーツカップにした。


僕「山田君、お待たせ。メニューの表記も英語だったので、すんなりオーダーできましたよ。」


山田「酒井さんは何を買ったんですか。やはり、米ドルを用意しておいてよかったですよね。米ドルだったら世界どこでも利用できますからね。酒井さんのアドバイスで日本で米ドルにチェンジしといて本当に良かったですよ。」


僕「僕が買ったのは、オレンジジュースとフレッシュフルーツカップです。本当は、香港だからマンゴープリンがあればと思ったんだけどね。なかったので少々残念です。以前、香港へ来た時に食べたマンゴープリンがすごくおいしかったんですよね。」


山田「いいですね。おれもマンゴープリン好きですよ。トロピカルで健康的ですね。俺たちが今から向かうカンボジアにもマンゴープリンはりますかね。」


山田「酒井さんが、レジでオーダーしているときに周りを見ていましたが、日本人はほとんどいませんね。っていうか、いないんですね。シーズンオフですしね。今のところ、日本人は俺と酒井さんだけのような気がします。」


僕「そうでしょうね。この時期にカンボジアへは、なかなか日本人も行かないでしょうからね。ましてや今日は、平日ですしね。夏休みだったら観光客も多かったかもしれませんね。日本人が少ない方が、なんだか海外って感じでいいですよね。」


山田「それもそうですね。俺も海外へ来てまで日本人だらけは嫌ですね。」


僕と山田は、それぞれ持ってきたアンコール・ワットのガイドブックを眺めた。


僕「山田君、国際空港のフリーWIFIがあるから通信したいのなら、スマートフォン利用できますよ。僕は少々、パソコンでフェイスブックをアップしちゃいます。」


山田「俺もそうします。そういう通信環境って大切ですよね。この時代には。」


山田「WIFIのような通信環境って大切ですね。大抵のところでもフリーな回線ってありますからね。フェイスブックをアップしちゃいました。」


僕「通信はボーダーレスですからね。僕もアップしちゃいましたよ。」


そんな会話を交わしながら二人は、それぞれの時間を過ごしていた。乗り継ぎ便の時間を待っていた。

山田「俺、ちょっと周りを見てきます。空港内を散歩してきます。お店をです。では行ってきます。」


僕「了解。ここで荷物の番をしているから、折角の香港国際空港だからゆっくり見てきたらいいよ。」


僕は、その間、仕事をしていた。僕はふと自分の腕時計に目をやった。そうすると現地時間で15時30分を少し回ったところだった。


今回のカンボジア アンコール・ワットの紀行は、スピルチュアル風水の仕事を兼ねてである、いつものことなのだが。今回のアンコール・ワットは、今までも何回か行こうと思ったのだが、タイミングが悪く、行きそびれていた。それがようやく今回、訪れることができるとはなんだか感無量である。


今回は、いよいよ僕はカンボジアへ呼ばれたって感じである。何事にもタイミングがあるって僕はいつも思う。


アンコール・ワットのことを、カンボジアでは、「すべての道はアンコール・ワットへ続く」と言われているらしい。未知の国、カンボジア。今回の渡航で何を感じとって帰国することになるのかは、この時、僕と山田は気が付きさえしなかった。どんな人たちと出会えるのかもこの時はわからなかった。


僕が、パソコンで仕事をしていたら、聞き覚えのある声で、僕の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。まさか、このタイミングで香港で知り合いに会うことはないだろうって思ってもなかった。ましてやこの時期だ。夏休み期間などであれば、偶然に出会うこともあるだろうが。


僕へ声をかけていたのは、大学時代ゼミで一緒だった女の子だった。名前は、奥本涼子だった。


奥本「酒井拾膳君?私、覚えている大学時代のゼミで一緒だった奥本涼子よ。私のことを覚えている?」


僕「えぇ、あぁ、マジで、香港で?知り合いに会うなんて思ってなかったよ。お互い大学を卒業して別々だったからね。本当に久しぶりだね。出会えて本当にうれしいよ。」


奥本「ほんと、わたしこそ超びっくりしたわよ。香港で知り合いに会うなんて。仕事で香港なの?」


僕「違うよ。今回は、カンボジアのシェムリアップなんだよ。仕事で。」


奥本「あぁ、そうなんだ。っていうか。ここ乗り継ぎターミナルだもんね。香港ってわけないか。」


奥本「一人なの?いや、今回は連れがいるんだけど、私、今からバンコクなの。バンコクで連れと会う予定なんだよね。」


僕「そうなんだ。あと一時間後の便?」


奥本「そうよ。酒井君は、今回、一人なの?」


僕「僕も連れと一緒にシェムリアップだよ。」


奥本「そうなんだ。連れ方は?」


僕「お店を見て回っているよ。そのあたりにいると思うよ。」


そんな会話を交わしていると、山田が戻ってきた。


山田「酒井さん、お店を見てきました。こちらの女性は?」


僕「大学時代のゼミの同級生で、奥本涼子さん。たまたま、このゲートでばったり10年ぶりに出会った感じだよ。」


奥本「酒井君。こちらは一緒にシェムリアップへ行く連れの方?」


山田「初めまして。こんにちは。山田勇也って言います。酒井さんには、お世話になっています。」


奥本「こちらこそ。初めまして。奥本涼子です。よろしくね。」


奥本「お二人、気を付けてカンボジアへ行ってきて下さい。私の飛行機、もうそろそろ搭乗開始時間だから。またね。酒井君」


僕「気を付けてバンコクへ、じゃ、また大学時代の仲間集めて食事でも、東京で。ちなみにいつ日本へ帰国する?」


奥本「そうね。帰国日は、一か月ぐらい先かな。」


僕「そうなんだ。仕事だから調整しずらいしね。また、日本に帰国したら連絡を頂戴ね。これが僕の名刺だから。」


奥本「サンキュ。わかった。日本へ帰国したらメールするね。山田君も気を付けて、カンボジアへ行ってきてください。じゃぁね。」


僕「じゃ。お互い気を付けて。」


山田「奥本さん、お気をつけて!」


山田「香港で知り合いに会うなんて。びっくりですね。よくわかりましたね。」


僕「彼女から声をかけてきたんだよね。僕もびっくりだよ。香港で知り合いにばったり会うなんて。っていうか、ビジネスはワールドワイドだよね。」


山田「奥本さんは、おひとりでバンコクで仕事ですか?」


僕「バンコクで連れと待ち合わせしているって言ってたよ。」


山田「そうなんですね。なんだか。仕事しているって感じのオーラ全開でしたね。」


僕「昔から、彼女は、テキパキしていたからね。ハキハキしていたしね。男性女性は関係なく彼女はフットワークがかなり軽いからね。どこでも行けちゃうよ。」


山田「そうなんですね。でも、離れたところからお二人を見ているとなんだか、恋人同士のようで、焼けちゃいましたよ。」


僕「またまた。そう見えましたか?」


こんなたわいのない会話を香港国際空港でしているなんて、僕もワールドワイドになってきたと自負していた。


山田「奥本さんってきれいな人ですよね。酒井さんは、昔、彼女と付き合っていたんですか?」


僕「どうして?」


山田「なんだか俺の直感でそんな感じがしたんですよね。」


僕「よくわかりましたね。どうして?気になる?」


山田「なんとなくですけど。でもちょっと焼けちゃいますね。俺の知らない酒井さんを知っていると思うとですけどね。でも、俺は、酒井さんと二人でカンボジアへ行けるんですもんね。その間は、俺が酒井さんを独り占めって感じですね。」


僕「じゃ、僕と山田君も今からカンボジアへ行っちゃいますか?」


僕「もしかして焼きもちでも焼いてますか?そうだったとしても過去の話ですからね。」


山田「焼きもちに決まっているじゃないですか。(笑)」


僕「まぁ。いいっか。冗談はそこまでにしとて。それはそうと、何か面白いものありましたか?日本では売っていないものがありそうですけどね。」


山田「特にこれといってなかったですけどね。香港のお土産のお菓子がおいしそうでしたよ。日本の温泉街のお土産みたいにきれいに包装されていましたよ。」


僕「そうだったんですね。パッケージがきちんとしていますよね。僕も先ほど、ざっと見てみましたけどね。」


山田「その通りなんですよ。お土産には丁度いい感じですよね。」


僕「僕はSWATCHのお店の隣のおもちゃ売り場に興味がありますね。飛行機の模型が気になりましたよ。スターバックスから見えますからね。」


山田「そうでしたか。俺も見てきていいですか。」


僕「いいよ。まだ、搭乗時間までは40分程度はありますからね。搭乗ゲートも目の前ですから、大丈夫ですよ。迷子にならないようにね。」


山田「わかりました。俺ももう子供じゃないから大丈夫ですよ。じゃ、見てきます。」


まだまだ子供っぽい山田がちょっと弟のように思えてきた。ハノイの時に出会ったのが初めてだったが、なんだか他人とは思えない印象がずっとある。



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