第2話 Journey(旅立ち)

渡航当日、僕は最寄りの駅から、成田国際空港行きリムジンバスが出ているため、そのアクセスを利用することにした。山田は、京成日暮里駅から京成スカイライナーに乗車したようだった。


僕宛へAM7:00に山田からのメールが届いた。僕にとっては、三年ぶりの成田国際空港だった。なんだか僕の気分は高揚しているのが分かった。実のところ、最近は羽田国際空港からの出国ばかりが続いていたからだ。


山田のメールでは、「今、日暮里駅に着きました。これからスカイライナーに乗車する予定です。待ち合わせ場所は、成田空港第二ターミナルですね。では後程。」といった内容だった。


僕は、返信メールを送信した。


僕「今回の僕と山田君のチェックインカウンターは、第二ターミナルの出発ロビーのDカウンター。ディパーチャーの時間により、キャセイ・パセフィックエアーのカウンターが違ってくるから注意してください。成田国際空港に到着したらメールくださいね。香港でのトランジットの時間が3時間程度あるので、香港でカフェタイムできるよう米ドルを用意しといたのがいいですよ。」


僕の乗車したリムジンバスは、成田国際空港第二ターミナルへAM8:15に到着した。山田も間もなく成田空港第二ターミナルの京成スカイライナーのステーションへ到着したようだった。


山田「酒井さん、俺、今、成田国際空港第二ターミナルの駅へ到着しました。お待たせいたしました。今回のフライトは、香港でトランジットの時間が3時間ですよね。米ドルを用意しといたのが、香港でお茶もできますよね。」といった内容のメールを受信した。


僕の返信は「そうですよ。僕は、米ドルにチェンジしときましたよ。山田君はもう間もなく出発ロビーへ着きますか。」と送信した。


山田からすぐにレスが届き「はい、まもなくです。」と返信がきた。


僕もすぐに返信した。「第二ターミナルのエクシオールカフェにいますから、立ち寄ってもらえますか。時間もあることだし、国際空港の空気感を味わうように日本を出る前に、少々時間をつぶしましょう。それの方が、旅気分も上がってきますからね。」と、山田へ返信メールを送信した。僕が付いた席は空港内のカフェテリアといった雰囲気の席がゲットできた。僕はその中2Fのカフェの席から空港内を眺めていると、山田は間もなくカフェへ到着した。


僕は、前日まで東京と横浜で仕事が入っており、終日バタバタし飛び回っていた。カンボジアへの渡航の準備は、前日の就寝前まで全くできていない状態だった。帰宅後、すぐに旅の準備をした。準備といってもスーツケースにPCとバッテリー、デジカメ、常備薬、パスポートなど海外露光で必要な物のみなのでそんなに時間もかからなかった。ということでカンボジアの情報は、山田の方が良く知っていた。僕は事前に、今回は山田へ現地リサーチを頼んでいた。


カンボジア、今回はシェムリアップ、アンコール・ワットの入口の都市への訪問である。

山田の事前情報によると10月末ごろまでは雨季らしい。通貨は、カンボジア通貨のリエルか米ドルが主流で、米ドルを利用するのが、何かと便利らしい。表示プライスも米ドル表示との情報を事前にゲットした。


スカイライナーのステーションより、登りのエスカレターまで山田は、小走りにスーツケースを転ばせながら、僕に近づいてきたようだった。山田は少し汗ばんでいる様子であった。山田のそういう無邪気さが、何とも僕の興味を引くところでもあった。山田世代の中でも礼儀節度をわきまえた立ち振る舞えできるところにも、僕は好感が持てる。


山田「酒井さん、おはようございます。お待たせいたしました。ようやく酒井さんのところへ到着しました。」


僕「おはようございます。山田君。走ってきたの?なんだか汗ばんでいるよ。今回もよろしくお願いしますね。」


山田「俺、酒井さんを待たせちゃうのが嫌で急いできちゃいました。それに俺の親からは人を待たすもんじゃないって言われて育ったんで。」


僕「そうですか。しっかりとした親御さんですね。だから山田君はきちんとしつけされているんですね。山田君、お気遣いをいただきありがとうございます。」


ではこの辺りで、今回のスケジュールを紹介したい。


スケジュール

10月21日 

AM10:45  CX501 NRT発➡PM2:40 HKG着


PM5:30(香港時間)  KA240 HKG発➡PM7:05(シェムリアップ時間) REP着(シェムリアップ)


10月21日 終日アンコール・ワット遺跡群探索


10月22日  PM8:05(シェムリアップ時間) KA241REP発➡PM11時40分 HKG着


10月23日  AM1時00分

(香港時間) CX524 HKG発➡AM6時25分 NRT着 

といったいつものように今回も弾丸スケジュールだった。


滞在ホテルは、ザ コットゥネイチャーリゾート&スパである。ネットの口コミでは、日本人のオーナーでなじみやすいとの評判だった。今回のシェムリアップへの渡航は、最終的には直近で決めたのだが、ひそかな計画はハノイから帰国後、半年前から決めていたため、このホテルの予約が取れた。


不思議な感覚だったが、今回はどうしてもアンコール・ワットというキーワードが頭から離れなかった。その僕の動物的感の理由は、カンボジアへ到着したらわかることになるのだろうか。


僕の旅の準備は、万全である。ただ、いつものように現地、シェムリアップに到着してからの予定は未定であった。山田も承知だ。現地に到着するまでは、特にスケジュールを立てないのが酒井拾膳の我流である。


成田国際空港から香港までは、約5時間半程度のフライトである。僕は事前にメールでのやり取りで、山田と今回の世界遺産のアンコール・ワットについて話していた。


アンコール・ワット遺跡といっても、実はアンコール・ワットだけではなく、近隣にアンコール・トムなどの遺跡もあり、かなりの見応えがあるようだった。スケジュールに時間に余裕があれば、シェムリアップから車で少々遠出をする山間民族の村へお邪魔するツアーなどもあった。


今、僕と山田がいる成田空港も国際空港だけあって、フリーWIFIの設備は整っている。成田国際空港では、平日ということもあって割と渡航者が少なく空いていた。僕たちの出国手続きに時間はそうかからなそうだった。


まずは、山田とキャセイ・パシフィックエアーのカウンターで、チェックイン手続きを行った。チェックイン後、成田空港を二人でぶらぶらし、出国気分を高めていった。空港ターミナル内では、ディパチャーを今か今かと楽しみに待っている人々でごった返していた。


成田国際空港は、やはり、日本の空の窓口といわれるだけあって、外国人の乗降客が入り乱れて、ごったがえしていた。そんな雰囲気がかえって旅情をかき立ててくる。


山田「酒井さん、そろそろ、ゲートのウエイティングルームへ行きませんか。今日は人少ないですが、早めに移動しませんか。」


僕「そうですね。そこで少しゆっくりしたいですし、ここまで来て、バタバタするのは嫌ですからね。」


といった会話をかわし、僕と山田は出国手続きを早めに済ませて、搭乗ゲートまで少し早めに行くこととした。出国手続きでは、僕たちの並んでいた列に日本語のわからない外国人が並んでいたため、僕はそのグループに列が違うことを説明した。


彼らは、日本語で「ありがとう」を伝えてくれた。日本語でお礼を外国人から言われるとなんだかうれしい気持ちになった。確かに漢字圏でない国の人にとっては、日本語の表記は分かりづらいのだろう。ちなみに今回徳と山田が訪れるカンボジアも文字がクメール語のため、僕たち日本人には全く馴染みのない表記である。空港内では、現地の言語と共に英語表記は必ずセットなので、どうにかカンボジアでも大丈夫なような気がした。


出国手続きを終えた僕と山田は搭乗ゲートまでは、モノレールに乗車し、搭乗ターミナルへ移動するパターンだった。


空港内の移動モノレールから見える成田国際空港の空は、快晴の一言で言い尽くせぬほどきれいなブリリアントブルーの青空だった。



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