Siem Reap(奇跡の出会い)

有野利風

第1話 Travel with the road(旅は道連れ)

僕が、ハノイ紀行から帰国し一年近くたった。ここのところ、毎日こなさなければいけない仕事のタスクを処理し、ラッシュアワーの満員電車に乗り込む生活を淡々とこなしているだけだった。僕こと酒井拾膳(さかい じゅうぜん)は、そろそろ日本への疲れを感じ始めていたところだった。僕は、自分自身でリフレッシュのそろそろタイミングなんだなって感じていた。この動物的感は、ストレスを溜めないようにある意味自己防御なのかもしれない。僕のこの感って、結構重要である意味いろいろと何かがはじまるタイミングでもある。


ということで、今回もまた風水の仕事を兼ねてではあるがカンボジア アンコール・ワットへの渡航する計画を立てた。ひょんなことから、前回のハノイで出会った山田と一緒に渡航することになった。当日、成田空港第二ターミナル出発ロビーで待ち合わせすることにした。昨年と同じ二人が、どうしてまた一緒にカンボジアへ行くことになったかというと、その経緯はこういったものだった。


最初は、三か月前に僕宛に送信されてきた山田からメールから始まった。


山田「酒井さん、お久しぶりです。ハノイでお世話になった山田優也です。近いうち、酒井さんとお会いし、食事でもいかがでしょうか。俺のベトナム旅行記を聞いていただきたいんですよ。」といった内容だった。


僕は、久しぶりに話がしたいなって思いながら、山田に会うことにした。山田とは、ハノイから帰国し、その後メールでのやり取りは行っていたが、実際に会って食事するのは、日本では今回が初めてであった。そこで日程調整を付け、5月6日に新宿のタイ料理店で食事をすることとなった。当日は、新宿アルタ前で18時に待ち合わせにした。


実際のところ、山田と会うのは帰国後10ケ月が経っていたので、二人の話はかなり弾んだ。ハノイからの帰国は、僕が先だったので、それ以降は山田一人で、ハノイからホーチミンまで旅行し、一人で帰国した。その話もメールでのやり取りである程度は聞いてはいたが、本人を目の前にして聞いていると、話は弾むものだった。


その時の会話の中で、僕が、今回、カンボジアのアンコール・ワットへ行くことを話した。アンコール・ワットというキーワードに山田が反応した。山田が東南アジアの遺跡に興味がある点も僕とよく似ている。というか、感性が一緒なんだなって感じた瞬間であった。実際のところ山田も大学で観光について学んでいるため、興味があったのであろう。


山田が僕のスケジュールに合わせるということで、山田も今回の僕のアンコール・ワット遺跡探訪へ同行することとなった。


山田「酒井さん、俺もぜひ一緒にアンコール・ワットへ同行させてください。お願いします。アンコール・ワットへは以前から訪れたかった遺跡なんですよね。なかなかタイミングがなかったため行けてないんですよね。」


僕「もちろん、OK。山田君のスケジュールはいかがですか。」


山田「俺が酒井さんの日程に合わせます。俺、学生だから割とスケジュール調整では融通ききますから大丈夫です。それにアンコール・ワットって、実は、俺のどストライクな遺跡なんですよね。」


僕「そうなんだ。アンコール・ワットもなかなか行こうと思っても行ける切っ掛けってないから、これも何かのじゃご縁でしょうね。よろしくです。」

といった感じで話は進んだ。


山田との話が決まった後、僕が事前にとっておいたツアーに追加で申し込んでみたら、これまたうまくツアーの追加ができた。こうまぁうまく流れるってことは、僕と山田がカンボジアへ呼ばれているってことなのだろうかと思うほどだった。実のところ、僕は今回のアンコール・ワット紀行では、なんだか珍しい人に偶然会う感じがしていた。この時点では、それが誰だかわからないが、少々楽しみなインスピレーションがわいてきた。


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