第10話
孝は「そうでしたね」と頷いた。私は女で腕力がないので、力仕事を孝に任せたのだ。バラバラにしたのはそうした方が運びやすかったからだ。殺し屋を雇うことも考えたけれど、この作業は秘密を守れる家族にさせる方が良いと思った。
「ああ、本当にあなたには感謝しているわ、孝」
「ありがとうございます。最後にもう一つだけ、聞かせてください」
「何かしら?」
「母さんのこの手間暇をかけた計画は、聡への愛の現れだったのですね?」
私は「もちろんよ」と微笑んだ。
「こんなに面倒で込み入ったこと、愛がなくては、できないわ」
「じゃあ、いつか私のことも、あなたの手で殺して下さいますか?」
「私が孝を?」
アハハハハ、と私は軽く笑った。
「あなたを殺すなんてするわけないじゃない。あなたにはどこかのご令嬢と結婚して、立派な地位についてもらわなきゃ困るわ。だってそれしか取柄がないでしょ?」
「私がどこで死のうが、母さんは構わないと?」
「当たり前じゃない。あなたはとても優秀だわ。でも、それだけ。私が愛するには値しない」
そう、私が愛するのは、聡ただ一人だけ。
ダージリンに再び手を伸ばそうとした、その時だった。
紅茶の揺れる水面に、鈍器を振り上げる孝の姿が映っているのに気が付いた。
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