第4話 恋愛相談してみた件
「なぁ、
「なんだよ。 いきなり。 いねーよ」
「だよなぁ。 じゃあ、ダメか」
「なに? 気持ち悪りぃなー」
「オレさ。好きな人が出来た」
「は? マジか? どんな人? 」
「うーん。 年上で、大人で、スゴく優しいんだ」
「気持ち、伝えたのか?」
「いや。まだ。 どうやって伝えるべきか悩んでる。皆んな、どうやってアプローチしてるんだ? 」
「そんなの…… 『好きです。付き合って下さい。』とかだろ? 知らねーけど」
「知らねーのかよ!」
「知らねーよ! ったく、それで最近ミス多いのか? らしくねーな。伝えて、サッサとフラれろよ!」
「何で、フラれる前提なんだよ!」
「だから悩んでんじゃねーのか? 上手く行きそうなら、そんな難しい顔してねーだろ」
「相手が大人だから、今までと勝手が違うんだよ」
ダメだ。
長谷部じゃ、相談相手にならない。
逆に、男の人の気持ちを掴むなら、女子に相談した方が良いのか?
やっぱダメだ。
露出の多い服装とか言われても、出来ないしな……
んー。
閃いた!
オレって天才!
相談相手は、森國社長にロックオンだ!
オレのベクトル調査によると、森國社長は七尾所長が好きな筈だ。
ココはかなりの確率で自信がある。
と、言うことは、、、
オレとマスターがくっ付いたら、森國社長のチャンスが増えるじゃんか。
傷心した七尾所長を慰めて、掠め取っちゃうとか、、、
いやいや、優しく慰めてくれた森國社長に自然とベクトルが向くかもしれない。
この作戦はイケるんじゃないか?
そんな事を考えながら、意気揚々と、バイトへ向かった。
「おはようございます!」
夜でも朝の挨拶をする事にもすっかり慣れた。
「旬くん。おはよ。今日はね、おススメの他に、夏の新メの味見もお願いしたいんだ。2食分になるけど、食べられる?」
「勿論です! マスターの料理は美味しいからいくらでも食べられます! 」
「若いなぁー。 でも、あんまり食べると太るよ。爽やかイケメンが台無しになっちゃうから程々にね!」
えぇーっ!
今、爽やかイケメンって言ったー!
マスターに言われるなんて、ちょー嬉しい!
夏の新メニューなんだろ?
カランカラーン。
やた!森國社長だ!
早速、お水とおしぼりを持って行く。
「いらっしゃいませ。 森國様。こちらが本日のお勧めメニューです。 一先ず、いつもの、お持ちしましょうか? 」
「いいね。お願いするよ」
「かしこまりました」
マスターに声をかける。
「オーダーです。タンカレートニックお願いします」
「森國社長? 」
「はい」
「了解」
冷凍庫から、タンカレーを取り出しておく。
マスターの手元をじっと眺める。
最初のカクテルは、コレを作れる様になりたい。
マスターの指先って、長くて綺麗だ。
大きい手なのに、繊細で、魔法の様に作って行くんだよなぁ。
…… この手で触れられたい。
頬を撫でられたいな。
その手がアゴにおりてきて、クイってされてのキス。
だんだんキスが深くなって、器用な指先が胸を辿る。
そして、腹に下がって、さらに下のオレのに触って……
ゆるゆると扱かれて……
「あぁぁぁ!」
ヤバ。仕事中に何考えた?
大学とバスケとバイトで、最近抜いてなかった…… コレ完全に溜まってる。
「っ! ビックリしたー。なに? 」
「いえっ! いえいえ! 妄想がっ、いや、カクテル作る想像をして…… すいませんっ。何でもないです。大変申し訳ありませんっ。 失礼しましたっ!」
取り敢えず、頭を下げておく。
「本当に面白い子だなぁ。 でも、奇声は禁止ね。ビックリするから。はい。あがったよ」
「サ、サンキュー」
そそくさとその場を離れた。
「お待たせしました。 タンカレートニックです」
「ありがとう」
一口飲んで、微笑む。
「美味い」
いつも、幸せそうに飲むんだよなぁ。
寛げる空間になっている様で、安心する。
相談したい事が有るって、どうやって切り出そうかと考えあぐねる。
「何? 今日は、話相手にもなってくれるの? 」
「あ、いえ。えっと、実は、ちょっとお願いが有って…… 」
「ん? おねだり? 好きなの飲んで良いよ。」
「あ、
「言いにくそうだね。ここじゃマズイ話なんだ。いいよ。何時に上がる? 」
「9時です」
「分かった。一緒に帰ろう」
さすが。
出来る男は、話が早い。
9時に店を跳ねて外に出ると、森國社長は植込みの隣のベンチに座ってタバコを吸っていた。
タバコ吸うんだ。
オレに気づいて、携帯灰皿を仕舞う仕草が絵になる。
この人もイケメンなんだった。
「すいません。お待たせしました」
「いや。 待ってないよ。 で、何処に行けばいいのかな? 」
「あ。そうですよね。何処行けばいいのかな。 落ち着いて話せれば何処でも良いんですが…… 」
「そう。お腹は空いてない? 酒は飲めるクチだよね? 」
「はい。飲めます。 お腹は… 賄い食べたんですけど、ちょっと減ったかな」
「ふふ。素直でよろしい。じゃ、個室のある居酒屋にしよう」
話ながら即座にスマホで店の予約をしたらしく、タクシーを止めて乗り込んだ。
オレがお願いしたにも関わらず、全部お任せ状態で申し訳ない。
高級な雰囲気のお店に着いて、ちょっと焦りながら着いていった。
個室のお座敷に通され、手際良く酒とツマミが注文される。
「あの。 森國社長を男と見込んで、折り入って相談が有るんです」
「何かな?」
「えっと…… オレは、ゲイで、
「そうなんだ」
「それで…… その…… 」
「男同士のやり方を教えて欲しい、とか? 」
「いえっ。あのっ。それは既に両方経験済みで……!! て、やっぱりっ、オレと同じですか?」
「やっぱりって…… まぁ、そうだけど」
「やった! 」
つい、小さくガッツポーズをしてしまう。
「で? 旬くんは、何がしたいのかな? 僕の性癖暴いて終わりじゃ無いよね? 」
「そうでした。オレ、年上の人好きになるのって初めてで、どうしたら良いか分からない、ってか、、、もっとオレを見て欲しいんです。それで、その道の先輩に何かアドバイスが貰えたらなって」
「はぁー。そんな事か」
「そんな事って……オレには、目下の最重要課題です」
「ごめん、ごめん。 そういう意味じゃなくて、金貸てくれとか、もっと危ない事頼まれるのかと思ったよ。 思い詰めた様な顔して、言いにくそうにしてたからさ。 コッチも緊張して、久々にタバコ吸っちゃったよ」
「あ、なんかすいません」
「それにしても、よく分かったね? ゲイ寄りのバイだし、今までバレた事無いんだけどな…… 君、中々鋭い嗅覚だね」
「いつも、七尾所長の事見てるから、もしかして、そうなのかなーって 」
「あー。
「そんなっ。諦めずに一緒に頑張りましょうよ!」
「ん? 読めたぞ。 2人を引き離そうとしてるのかな? 」
「そこまでは考えてないです。確かに、森國社長が、七尾所長の事捕まえてくれたら助かりますケド…… 」
「でも、いいの? 自分の雇い主を売るような事を言っちゃって」
「えっ? えーと」
「あれ? 旬くんは、(株)春と秋のアルバイト社員じゃないの? 」
「そうですけど…… 」
「君…… 春日さんは、そこの代表だよ。そして、雨野さんの名前は
「えーっ‼︎ 知りませんでした。七尾所長って、ウチの社長なの? 」
「ははっ。どおりで、春日さんへの態度が妙に素っ気ない訳だ。なんだか腑に落ちたよ」
それから、オレたちはお互いの恋愛話をした。
オレは、マスターの何処に惚れたか沢山話したし、森國社長は、七尾所長の何処が良いか、懇々と説明してくれた。
キリッと冷えた日本酒も、オレたちを饒舌にした。
「僕が大学3年で、春日さんが4年の時からだから、もう、8年になるのか… その間、恋人は居たけど、いつも根底に春日さんが居てね。忘れられないんだ。突然、春日さんが転勤で遠くに異動になった時は、これで本当に終わりだと思った。でも、2年振りに戻ってきた時、一気に引き戻された気がしたよ。僕のサロンに顔出してくれた時は、漆黒の天使が舞い降りたって思った。あの人、本当に綺麗だろ? 」
「はい。確かに。この世のものとは思えないような美しさがありますよね? 」
「そうなんだよ。分かってくれる? 」
酔った森國社長が、お銚子を持って向かいの席からオレの隣に移動して来た。
酔ってるせいか距離が近い。
「分かりますよ。マスターだってそうですもん。はぁ。ホント切ない」
2人してお猪口を煽り、また、継ぎ足した。
「お互い、報われないな。こんなに相手を想ってるのに」
「ホントですね…… 」
すぐ真横に、森國社長の潤んだ瞳が有った。
何故だか妙に、切なくて、人恋しくて、多分同じ想いでいるこの人の事を、猛烈に癒してあげたいと思った。
頭のどこかで、ダメダメ、コレは酒のせいだぞってストップを掛けるオレと、いいじゃないか、酒のせいにして流されてしまえ、と快楽に溺れさせようとするオレが鬩ぎ合っていいた。
森國社長から目が離せない。
「旬くんってさ、優しいよね。何故か落ち着く…… 」
とうとう、オレは理性を手放した。
甘い蜜に引き寄せられるように、唇を合わせた。
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