第2話『使命』
僕は街をうろうろと歩き回る。そしてすれ違う人の顔をチラッと見る。
それでその人の大体の感情は分かる。昔から他人の表情から感情を読み取るのは得意だ。
この人は何か良いことがあったのか、もしくはこれから良いことがあるのだろう。それはいいことだ。
僕が探している表情は、憎しみに溢れた表情。
この感情を抱いている人はこの街にとって危険で、消さなければいけない。
何でこんなめんどくさいことを僕がしなきゃいけないんだろうと思う。
でもしょうがないんだろうな。
これは気付ける側の人間になった僕にしか出来ないことで、きっと僕の使命だから。
僕が気付けるようになったのは一週間前。
友人が学年一の美少女と付き合っていた。以前から付き合いたいとは言っていたが、全く相手にされていなかったというのに。
この時はまだ気づいていなくて、こんなこともあるんだ。これはイジリがいがあって面白そうだと思った。結果的に鬱陶しい自慢話を聞かされただけだったけど。
しかし、その自慢話も聞けなくなった。
その友人が消えたからだ。死んだのではなく、元々いなかったかのように存在が消えた。
この時僕は薄々気付き始めた。
友人は多くの人から嫉妬され、あいつ羨ましいな、死ねばいいのにと言われていた。
この街では誰かの夢が叶えられている。そしてその現象は僕にしか認識できない。
夢で人を消す事が出来る。僕はこの現象を恐ろしく感じた。
だからといってこの現象について何も知らない僕には止め方も分かるはずがなく、受け入れるしかないのかと考えた。
しかし止められはしないけど、マシにする方法が頭に浮かんだ。
他人の事を死んでしまえと願う奴を殺せばいい。そうすれば夢が叶った結果で人が死ぬ確率が少しは下がるかもしれない。
その日から僕は人を殺すことに使命感を覚えた。
僕がやらなければ、夢によって人が殺されてしまう。僕はそれを阻止することが出来る。
自分がヒーローになった気分がした。
僕はとある男性の表情に目を止めた。
こいつの目は憎しみの目だ。それもこいつは少し前を歩く女性に対してその視線を向けている。
感じ的には逆恨みなのかな。
まあ、そんなくだらない予想なんてどうでもいいか。どんな理由だろうがこいつは殺す必要のある人間だ。
僕はその男性に声を掛ける。
うーん、どう殺そうか。
ふふっ。笑える。
以前は「よし、殺さなきゃ」だったのに、今は「どう殺そうか」って殺すことに慣れてきてるな。
さて。
正々堂々と正面からってヒーローっぽいな。
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