第7話大輝くんは初めてのゲーセンに行っているようです(2)
「あ、あれとか面白そうじゃね?」
三人でクレーンゲームの種類を見て回っていると、良吾が指を指してそんな声を上げる。良吾の指と視線の先を見てみると、うさぎのぬいぐるみが景品の、三本爪型のUFOキャッチャーの台があった。どうやら、1分間の間好きに動かして調節できるらしい。
「やってみようよ、あれ」
啓介が良吾に同意して、言葉を出す。
「んじゃ、俺はやり方あんまり知らないし、啓介からどっちが先にやってみてくれないか?」
ゲーセンに来るのが初めてな俺は、そうお願いをする。良吾も啓介も、ゲーセンには慣れてそうなので大丈夫だろう。
「じゃ、先に俺がやってみるよ。大輝はみといて」
「ああ、わかった。頑張れよー」
「がんば、がんば」
とりあえず、様子見程度に。と口にした良吾はお金を入れて、レバーを動かし始めた。
「おっ、これはいけるんじゃないか!?」
良吾が動かしていたクレーンは、これでもかというぐらいにピッタリとうさぎの真上に落ちてきたので、驚きの声を上げる。クレーンはそのままうさぎの頭をがっしりと掴み、上へ持ち上げる。
(あぁっ、惜しい!)
ちょうどクレーンが一番上へ上がりきった瞬間、クレーンの力が弱まり、うさぎの頭を離した。
「やっぱり無理かー…啓介、やってみてくれないか?」
俺が惜しいと思っていると、良吾が、さも当たり前かのようにそう言った。
「え?今の、惜しくないか?」
「いや、あれが普通なんだよ。どっかに引っかかるかしないと、お金をいっぱい使わないと取れないな」
「へえ、そういうもんなのか…難しいんだな、クレーンゲームって」
「俺はコインゲームは得意だけどクレーンゲームは並だからな…クレーンゲームは啓介が得意なんだぞ。な?啓介」
「うん、これくらいなら、すぐ取れそうかな…」
そう言ってお金を入れた啓介はレバーを握り、1分間の時間を使って調整に調整を重ねる。
「よし、ここかな」
と、啓介が呟いて落下ボタンを押すと、うさぎのぬいぐるみの中心より少しだけ右にずれてクレーンが落ちる。
(こ、これは…)
落ちたクレーンの腕の一本が、うさぎの腕の間に挟まっていた。そのままクレーンはうさぎのぬいぐるみを持ち上げ、上がりきった時のアームの弱まりなど一切感じさせない安定ぶりで、落とし口の上へ来る。
「啓介のテクニックはやっぱり凄えな。どうやったらそんなピッタリ挟めるんだ?」
「クレーンゲームにはいくつかパターンがあるからね。それだけ覚えれば比較的簡単に取れるよ」
(す、凄いな…)
俺は二人が話しているのを横目に、そんなことを感じていた。
(でも、啓介がこういうこと得意って、ちょっと意外だな)
「で、大輝はやってみたい台あったか?」
クレーンゲームの種類を見て回ることを再開し、それを終えると、良吾が俺にそう聞いてきた。
「そうだな…さっき二人がやってたうさぎのぬいぐるみが景品のやつがやりたいな。やり方も分かってるし」
「あれか。よし、わかった。多分景品補充されてないだろうし、俺が店員さん呼んでくるよ」
そう言うと、良吾はカウンターの方へと歩いて行った。
1分ほど待つと、良吾は店員さんを連れてやってきた。
「よし、やってみるか!」
店員さんが補充してくれた景品を見ながら、気合いを入れた。
「僕もアドバイスするから、とりあえずやってみなよ」
「ああ、任せとけ」
そう意気込んだ俺は100円玉をいくつか握り、クレーンゲームの台と向き合った。
「…やっと取れたぁー」
「おめでとう、大輝君」
「おめでとうな、大輝」
苦節すること20分、試行回数12回。ずっと隣で啓介にアドバイスをして貰っていたので、啓介もやりきった感を出している。初めて取れたという感動の余韻を残したまま、景品取り出し口に手を伸ばす。
「よかった。でも…」
(これ、どうすっかなぁ…)
一番取りやすそうという理由で選んだ景品を手に入れた俺は、それの使い道に悩むことになるのであった。
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