第6話大輝くんは初めてのゲーセンへ行っているようです

「あー、あそこのシュークリーム美味しいんだよー」


 ゲーセンへ向かうべくチャリを漕いでいる途中に、啓介が反対車線側のケーキ屋さんを指差してそう言った。この近辺に詳しくない俺に教えてくれているのだろう、ありがたいことだ。


「あの店シュークリームだけじゃなくてケーキもうまいんだぜ?モンブランとかオススメ」


 と良吾が付け足す。また今度買いに来てもいいかもしれないな、モンブランもシュークリームも好物だし。


「あ、あっちに見える体育館、卓球とか出来るんだぜ、昔よく行った覚えあるわー」

「あ、この店のプリンおいしいんだよー、つい2ヶ月ぐらい前にオープンしたばっかりだけど」


(…そういえば啓介は甘いものが好きだと言っていたな。だからこんなに詳しいのか…)


 なんてことを考えていると、いつの間にか目的地についていた。


「本当ならもうちょい近くにゲーセンあったんだけどさ、あんま大きくないからな。ゲーセンデビューは華々しく飾ろうぜ?」

「あ…ああ、そうだな」


 正直、店に入るなりの騒音と、それに対する周りの平気さに圧倒させられていた。


「お…音、大きいんだな…」

「ま、これぐらいの音量すぐ慣れるって。それじゃあ最初は…やっぱりメダルゲームか?」

「じゃーメダル引き出してこないと。ちょっとここでまっててねー」

「ってわけで、ここでまっといてくれよ、大輝」


 二人の慣れぶりには驚かされた。ゲーセンに行ったことがない俺は二人の言うことを聞いて、その場で待っているしかなかった。




 その場で3分ほど待っていると、良吾と啓介の二人がカップを持ってこちらに歩いてくるのが見えた。


「っつーわけで、500枚ぐらい落としてきたんだけど」

「僕も500枚だよー、せっかくだから、みんなで回ってみようか」

「おーい、大輝、こっちの方から行こうぜー」

「あ…ああ、わかった、すぐ行くよ」


 俺は先導されるがままに、二人の後ろをついていった。


「まずはこのゲームだ。一回メダル入れてやってみ?」


 良吾に言われた通り、メダルを入れてボタンを押す。


「わっ、なんか玉が出てきた。これをどうするんだ?」

「いいタイミングでボタンを押して、ちょうど[UP]って書かれてる穴に入れて、玉を上に上げていくんだ。それで上がれば上がるほど配当UPってこと」

「へえ、もう一回やってみてもいいか?」

「どうぞどうぞ」


 俺はさっきの通りメダルを入れて、今度はタイミングを見てボタンを押す。


「あー、惜しいっ!」


 俺が放った玉はちょうど[UP]の隣の穴に入った。悔しがっていると、隣から啓介がアドバイスをくれる。


「この台はね、[UP]の穴がちょうどここあたりに来たら結構入りやすいんだよー」


 と言ってメダル入れてボタンを押す啓介。啓介が放った玉は[UP]の穴に吸い込まれるかのように入っていった。


「す、すごいな、綺麗に入ったぞ!?」

「でも、二段目がダメだね…」


 啓介がそう言うと玉は二段目の中で一番配当が低い穴に入る。


「まあ、一段目は比較的入れやすいから、もう一度やってみなよー」


 という言葉とともに、俺にメダルを渡してきた。俺は啓介のアドバイス通りに玉を放った。


「あっ、上がったぞ!」


 二段目に上がった玉は今度ランダム配当の穴に入る。


「おお、六倍って結構いいんじゃないか!?」

「二段目の中では高い方だね。おめでとう」

「おーい、大輝、啓介、こっちのゲームもやってみないかー?」


 俺が高配当を当てて喜んでいるうちに、良吾は新しいゲーム台を見つけていた。


「こ、この台はどうやってやるんだ?」

「まずここにメダルを入れて…」


そこから俺はメダルゲームにのめり込んで…




「…楽しかったぁ!」

「それは良かったよー」

「でも大輝、まだクレーンゲームが残ってるんだぜ?」


(クレーンゲーム?)


 何だそれは、という疑問を解消するべくそう言い放った良吾の指が指す先を見ると、UFOキャッチャーが数え切れないほど設置されていた。


(なるほど、UFOキャッチャーのことか)


 いかんせんゲームセンターに来るのは初めてなので、昔やっていたゲームに出てくるUFOキャッチャーのことしか知らなかった。


「よし、どのクレーンゲームがしたいか探すか。一旦一周してみよう!」


 その良吾の意見に、俺と啓介は喜んで同意していた。

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