第5話大輝くんは遊びに出かけるようです
「おはよう、鳥原」
学校へ着くと、いつもの通り良吾がいたので、挨拶をした。が…しまった。いつもの癖で鳥原って呼んじゃった…謝っておこうか?俺と良吾は[友達]だしな。
「そ、そんな名前の人、知らないッ」
「………って、エ○マンガ先生か、お前はっ!…はぁ、おはよう、良吾」
「おう、それでよし。おはよう、前沢」
「そ、そんな名前の人、知らないッ」
「お前もじゃねえか!」
ハハハ、と二人の間で笑いが起こる。こうやってバカみたいに話してはしゃぐのがこんなに楽しいことだったなんてな。もっと早くから気付けてたら、中学校生活も楽しかったんだろうか…?…って、やめだ、やめ。中学校生活が楽しかったらこの学校には来てないわけだし。そんなことを考える意味はないな。今が楽しけりゃそれでいいんだよ。
「あ、おはようー、お二人とも」
「あ、おはよう、啓介」
「おはよう、岡崎!」
良吾が岡崎の部分を強調して挨拶する。
「おはよう、良吾君。どうしたんだい?急に苗字で呼んできて」
「なんでもないよ、おはよう、啓介」
「ははは、まぁさっきの話を聞いてなかったから当たり前だよな」
(ってか、良吾がアニメとか見るのは意外だったけど、啓介は観ているのだろうか?)
なんて疑問を抱いていると、良吾から話しかけてきた。
「なあ、大輝」
「なんだ?」
「大輝ってさ、ここら辺まだあんまり知らないだろ?」
「引っ越して来たばっかだからな。それがどうした?」
「じゃあ今日さ、散策ついでにゲーセン行かね?啓介も一緒にさ」
人生で初めてのお誘いに目を白黒させていると、啓介が先に口を開いた。
「わかったー、今日ゲームセンター行こうかー」
「お?珍しく乗り気だな?啓介」
「だってゲームセンターでしょ?得意なんだー、ああいうの」
「お、お、俺も行きたいっ!」
勇気を出して返事をしてみるも、二人はぽかーんとしたままこちらを見ているだけだ。
「だ、駄目…だったか?」
俺がそう言うと、良吾は笑って返事を返した。
「お前なぁ…大輝を誘ってんだから駄目なわけねーだろ?どうしたんだよ、急に」
「あ、あぁ…本当に、本当に行って良いのか?!」
「だから、良いって行ってんだろ。てか、行くかどうかは俺たちじゃなくてお前が決めるんだからな?はぁ…」
どうしたんだ?本当に…と鳥原は呟いて。
「じゃあ、行けるんだな?それじゃあ5時にチャリで学校前!わかったか?」
「ああ…わかった。ありがとう、良吾、啓介」
「どうしたのー?なんか今日変だよ、大輝君」
「い…や、なんでもないよ。そんなことよりもうすぐ先生来るから、席に戻ろっか」
「なんでもないんだったら良いんだけどさ。何かあったら俺と啓介に相談しろよ?」
過剰な心配を二人にさせてしまったのは心が痛んだが、こんなことを相談する訳にはいかないので、「ああ」とだけ答えて席に着く。…でも楽しみだなぁ、初のゲーセン!
全ての授業を終えて、良吾の元へ向かうと、啓介も良吾の隣にいた。
「大輝今日なんかソワソワしてたけど大丈夫か?」
「あ、ああ、何でもない、大丈夫」
ゲーセンに行く約束をしてからずっとテンションの上がっていた俺は、緊張と歓喜からか、あまり授業に集中できていなかった。
「じゃ、帰ったらここ集合な」
「ああ、わかった」
「りょーかいー」
二人との別れの挨拶を済ませた俺は、無意識のうちに鼻歌を歌いながら、軽快な足取りで帰路に着いた。
「どの服で行こうかな…ゲーセン行くのに変じゃない服ってどんなのなんだろうか…決めるのに時間かかっても駄目だしな…5分前には着いておきたいし…でも早すぎたらずっと待ってるみたいで変なのかな…?でも………」
ちゃんとゲーセンの予習はした。ゲーセンとは、クレーンゲームやコインゲームをして暇をつぶしたり、遊んだり出来る場所だ。でも…服装なんてどこ調べても載ってないじゃん、どうしよう…といった風に、俺は初デートで緊張してる彼氏さながらの焦り具合で、服やバッグを決めて、すぐに家を出た。
「早すぎたかな…?」
約束の場所についた俺は、時間を確かめるべく自分の腕につけている時計を見ると、針は4時47分を指していた。まあ、二人が来るまでゲーセンの予習でもしていたらいいだろう。
「おーい、大輝。待ったか?」
予習を始めて10分ほど経った時に、背後から聞き慣れた声が届いた。そう、彼女持ちで運動神経抜群、イケメンであり人脈も広いリア充、鳥原 良吾だ。
「い…いや、まって…ない…ぞ…?」
「嘘つけ、変な気をつかうな。ごめんな?待たせちまって」
早く来たのは自分なのに、良吾に謝られて少し悪いような気がした。
「でも…早く来たのは俺だし…別に、謝らなくていいよ」
「ああ、ありがとうな、大輝。…いつも通りなら、もうすぐ啓介も来るはず…っと、ちょうど来たな」
緊張と気恥ずかしさが入り混じり、良吾の視線から逃げるように時計に目を向けると、針は4時59分を指していた。啓介が時間ギリギリに来るのはいつものことなのか、良吾は啓介に向かって笑顔で手を振っている。
「おー、二人とも早いねー、それじゃあ行こっかー」
「おう、行くか」
「そ、そうだね…行こっか」
(やばい…めっちゃ楽しみ…緊張するなぁ)
はやる気持ちと緊張を押さえて、俺はチャリに乗った。
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