-39-「了承」
翌日。
木島と八幡は、ハンコ入りの承諾書を持ってきた。
伊月
「確かに保護者のサインなんだろうな。」
木島
「確かだぞ!いやぁ、大変だった大変だった。」
八幡
「本当っすよ。どれだけ上手く話を揉んだことやら。」
伊月
「……おい。保護者にはなんて言ったんだ。」
八幡は、さも名案を語るかのように意気揚々と胸を張った。
八幡
「木島と旅行するって言ったっす。」
木島は指をいじくりつつ、心配そうに俺に尋ねた。
木島
「八幡と出かけるって言ったのだけど……嘘じゃないから、いいのだよな?」
伊月
「いいわけあるか。結果として騙してるじゃねーか。」
八幡
「おっと、それ以上は言っちゃダメっすよ。なんたって旦那は『承諾書を持ってきたら連れて行く』と約束したんすから。」
ヤロウ。揚げ足取りやがって。ならこっちだってな。
伊月
「証拠は?」
必殺、物的証拠要求。相手は死ぬ。
八幡
「ボイスレコーダーに録音されてますがね。」
物的証拠あるんかい。俺は死ぬ。
俺の絶望をよそに、3人はどこから持ってきたのか、箱根のるるぶに付箋を貼り、計画を立て始めていた。
八幡
「まー温泉っすよ、箱根っていったら温泉っす。」
木島
「大涌谷も欠かせないぞ!黒たまごを食べるのだ!」
水本
「箱根山も登ろうね!」
八幡
「山登るために外出るだぁ?バカじゃないの。文明の利器を知らない田舎モンっすか?」
水本
「今、世界の登山家を敵に回したね!?」
健気な水本に、八幡は毒づく。その傍ら、木島はルンルンしながら付箋を貼っていく。
平和だ。
俺、Opener探しをすればするほど、日常に戻れなくなる気がしてるんだ。
こうやって平和を享受する時間も、少なくなっていく気がしてるんだ。
なんたって、俺たちはOpener。個人が持てるはずのない力を持つ者だからな。
……せめて、このアホ面のガキどもを、いつまでもアホ面でいさせたい。
異能力者だとか、普通だとか、そういうことで苦しまないように。
ただのガキとして、人並みに褒められ、人並みに怒られて……人並みに成長してくれればいい。
なーんてな。
ま、どうなっても知らね。知らねーぞ俺は。
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