-33-「一縷の望みを見せてくれ、八幡君!」

Openers相談所。



八幡君は、伊月君の股間に神棚を設け、丁寧に祀っていた。



八幡

「ナムナム、オブ、アーメン。インダス、エジプト、ホワンホー、メソポタミア。ナオト、インティライミ。」



木島

「八幡君……。」



呆れてしまって二の句が言えない。


八幡君はいつもこうだ。状況にそぐわないことばかりしている。



水本

「八幡ちゃん!遊んでる場合じゃないよ!」



水本君の檄に、八幡君は反抗的な眼差しを見せ、向き直った。



八幡

「遊んでねぇーんすわ。妖怪を退治するための祈祷なんすわ。」



木島

「それをなぜそんなところでやる必要があるのだ?」



八幡

祈祷キトウつながりっす。」



木島

「勘弁してくれ、八幡君……時は一刻を争うのだ!」



八幡君は我々の真剣さに溜息を吐き、腕を組んだ。



八幡

「そんなだから快楽犯の思考が分からないんすよ。」



木島

「快楽犯、なのか?」



八幡

「左様で。こんな茶番劇を用意してるんすから、好きでやってるんでしょうよ。


写真撮って身元特定したんすけど、個々人の経歴に一切のつながりはありやせんした。つまり、ランダムで襲ってるってことっす。通り魔的っすねぇ。」



木島

「ちょっと待て。写真、撮ったのか!?なぜそれを言わなかったのだ!


見せたまえ!データリストを参照すればすぐに敵の正体が分かるはずだ!」



八幡君は……あぁ、嫌だな。不敵な笑みを浮かべ始めてしまった。



八幡

「欲しいっすかぁ?んー?」



木島

「あ、当たり前だ。」



八幡

「じゃ、まずポールダンスでもしてもらうっすかね。」



木島

「八幡君、いい加減にしたまえ!盟友の危機なのだぞ!?」



ちょっとカッとなって、八幡君に声を荒げてしまった。


しかし、八幡君はなおも変わらず。



八幡

「リーダー、落ち着きなせぇ。生理すかぁ?」



木島

「ち、違う!君は伊月君の命をなんだと思ってるんだ……!」



八幡

「そりゃあ、大切な命じゃないんすかねぇ。


でも、心に余裕を持たないと。」



八幡君は、やんわりと微笑んだ。


それを見て、私は少し思い直す。



これが、八幡君なりの気遣い方なのかもしれない。


でも、かといって休んでいる暇は……。



八幡君は神棚に一礼し、立ち上がった。


そして、バーの控え室に向かう。今は、倉庫兼クローゼットとして使われている場所だ。


そこには、伊月君のものだけでなく、我々の着替えも常備してある。Openers相談所は24時間体制だからな。



少しして、八幡君は服を持って出てきた。私と水本君に一式を投げる。



水本

「わっ、とと。


これは……?」



八幡

「服。


銭湯でも行きましょうや。落ち着いて考えるのが肝心っすよ。」



せ、銭湯。



水本

「そ、それだと僕が話し合いに参加できない!」



八幡

「女みたいな顔してるから女湯でも問題ないっすよ。」



水本君は昔からそう言われてきたらしい。女みたいだと。


だから、これを言われると水本君は怒る。



水本

「また言った!」



八幡

「また言ったっす。


さ、行きやしょ。そしたら写真もあげますんで。」



八幡君の誘いに乗るしかなさそうだ。



伊月君は、息を荒くして眠っている。



……待っていてくれ。


盟友は必ず守るから。

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