-32-「情報を集めるぞ、水本君。」

廃ビルに戻ってきたぞ。


早速、私の能力を発動しよう。



やり方は簡単。


首の裏、後頭部の付け根あたりに、力を込めるのだ。


まぁ、普通の人はそんなこと出来ないか。



すると、辺りが少しだけ緑がかる。


そして、たくさんのウィンドウが視界の中に表示されていく。



たくさんあったら見づらい。さらに視点を絞り、集中するのだ。


すると、欲しい物のデータリストだけが目の前に現れていく。


あとはこれをメモするだけ。


だが、集中しながらメモを取るというのはなかなか難しい。なので、水本君を呼ぶ。



木島

「水本君。今言うことをメモしたまえ。」



水本

「う、うん!」



木島

「よし。」



まずは、七人ミサキの立っていたところ。



材質はコンクリート。経年劣化は他の位置と比べても変わらない。


なにか、変化はないか。他の位置と異なるところは。



駆け巡っていくデータリストを目で追っていく。



木島

「まず、足跡がある。それぞれ各個人の足のサイズだな。」



ということは、あれはお化けじゃない。ちゃんと地に足をつけた人々だ。



木島

「息はしているが……心がない。」



彼らは精神が死んでいる。植物状態に近しい。


七人ミサキはゾンビとかキョンシーに近しいなにかなのか?


さらに精神に関するデータを辿る。



木島

「……あった。あったぞ。彼らは……共通意識を持っている。」



これは見たことがあるぞ。


学校からの帰り道、いつも通る神社がある。


そこは竹林に囲まれていて、静謐な雰囲気とさざめく風の音だけが支配する神秘的なところだ。



その竹林は、まさにこの七人ミサキに似ている。


一見、一本一本が個々の竹に見えるが、実は土の下ではすべて根っこで繋がっている。



繋がっているのだ。七人ミサキも。


ということは、繋げている者がいるはずだ。


つまり、裏で七人ミサキを操る者が。



木島

「そこまでは……分からないか。


水本君。どこかに七人ミサキの落し物はないか。くまなく探してくれ、どんなカケラでも構わない。」



水本君は頷き、地に膝をついて調べ始めた。



しかし、どうやって犯人は七人ミサキを操っているのだろう。


やはり、Openerなのかもしれない。


しかも、本人が出てこなくとも支配権を握ることが出来ると。


セコい。セコいぞ、七人ミサキ。



木島

「絶対に倒さねば……。


水本君!何か無いのか!」



水本

「ん、んと……無い、かなぁ。」



……敵も徹底している。


となれば、どうするんだ。



行き詰まった時のOpeners鉄則。



八幡君に頼れ。



私たちは、その場を後にした。



外は雨が降っている。



梅雨だ。



悪い奴が雨に潜んでる。



伊月君を奪わせてなるものか。



彼は私の盟友だ。


あと、拠点のオーナーだ。


あと、出資者だ。


あと、マネージャーだ。


あと…………。

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