-27-「調教」
当日。
梅雨にしては珍しく晴れ。
そしてここは、街中の公園。
ボランティアに参加する人々、約20人が集まっていた。
木島
「ゴミ拾い日和だな、うむ!」
水本
「がんばるよー!」
八幡
「チクショウ……何匹てるてる坊主撃ち殺しといたと思ってんの。」
伊月
「だりぃ……。」
全員、ゴミ拾いに相応しい恰好こそしているが、温度差は歴然。
俺と八幡は、既に半分死んでいた。
八幡
「旦那ぁ……恨みますぜ。」
伊月
「あぁ……俺も同じこと思ってたわ。」
ボランティアなんか参加するんじゃなかったわ。
だる。面倒。帰りたい。
ぶつぶつと文句言ってると、主催者が現れた。
まぁ、一般的なおばさんだな。
八幡
「あいつ撃ち殺せばボランティアやんなくて済みますかねぇ。」
伊月
「おい。気持ちは分かるが言っちゃあかん。」
主催者は簡単な挨拶と感謝、そして今日の日程を説明する。
俺らが担当になったのは……俺がこいつらと会った、廃ビル付近だった。
人気がないからか、ゴミがよくポイ捨てされてるんだと。
木島
「思い出の場所だものなぁ。しっかり掃除しておきたいな!」
伊月
「思い出の場所だぁ?ただの廃ビルじゃねぇか。」
木島
「思い出に場所の指定はなーいぞ。
さぁ、レッツゴー!」
木島と水本はかけっこしながら廃ビル方面へ。
八幡もめちゃくちゃ怠そうに付いていく。
よし。
俺は、ちとそこの喫茶店で時間潰すかな。
こっそりと道を逸れて、喫茶店方面へ歩いていく。
しめしめ。
突然、俺の背中に金属の塊が押し付けられた。
一筋の汗。
恐る恐る後ろを見ると、そこにはすげぇ不機嫌そうな八幡がいた。
八幡
「……旦那ぁ。人にこんな面倒ごと押し付けといて、いいご身分すねぇ。」
やべぇな。
こいつはマジで撃つ可能性のある女。
対応を間違えるなよ、俺。
伊月
「なんだ?お前も喫茶店に『ボランティア』しにいくのか?」
これが最善の一手だと踏んだ。
こいつもこっち側に入れちまえば。
……銃口が、ゆっくりと離れていく。
上手くいったか。
しめしめと、後ろを振り返っ、
振り返ったら、顎下に銃口が向けられていた。
伊月
「な、なぁに?」
八幡は、目を見開き、口角を不気味に歪ませて笑っていた。
八幡
「ダ・ン・ナァ……そういうつもりなら、先に言ってくだせぇよ。水くさいじゃないっすか……。
間違えて、撃ち殺したくなっちまったじゃねぇっすか。」
八幡は、銃口を俺の股間に向け、非情にもトリガーを引きやがった。
瞬間、激痛が走る。
え、なに? なに? ナニ?
俺はわけもわからず股間を抑え、その場にしゃがみ込んだ。
血は、出てるか?
いや、出てない。
当たりどころがよかったのか?
いや、あいつ撃ったんだが?
パニックになっていると、八幡は俺の胸倉を掴んで持ち上げてきた。
八幡は、いつも通りの不敵な笑みの中に、愉快さを含んで俺を見つめた。
八幡
「にひひ。エアガンっすよ。将来、私の処女を奪ってアヘらせる予定のモノを易々と奪いやしませんぜ。
だけど、次はないっすよ。」
八幡は、俺の額にキスをした。
やべぇ。
こいつ、やべぇよ。
狂気と恐怖、余裕と愛嬌、そういうの混ぜこぜに使われると、頭がおかしくなりそうだ。
俺、今どうなってんだ。
八幡
「さ、喫茶店に『ボランティア』しに行きましょうぜ。私は抹茶ラテっす。」
伊月
「はい。」
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