-21-「追跡」
少し歩く。
立ち止まる。
看板の後ろで、水本が様子を窺っている。
水本の方向へ少し歩く。
立ち止まる。
茂みの中で、水本が様子を窺っている。
なんだこれ。
いつまでこんなしょぼい追跡続けねばならんの。
俺は追跡を続けながら、色々考えた。
俺、なに見させられんのかなって。
まぁ、子どもの秘密だ。
大したことはないと思うんだが。
だが、Openerだ。
もしかして死体の山とか?
「見たね。君も共犯だ。」とか言われたらどうしよう。
水本はなんつーか、あんまり前に出てくるタイプじゃないから、まだどんな子かよく分かってない。
いや、逆か。木島が前に出てきすぎるだけか。
俺はしばらく歩いた。
だんだん、建物が少なくなってきた。
川の流れる音が聞こえる。
次第に道は消え、俺は背の高い茂みの中を歩かされた。
俺、どこに連れてかれてんだ……?
やがて、茂みは開け、川の岸に出た。
なんだ。俺、水本にここでドザエモンにでもされんのかな。
しかし。
俺は、思っていたものと大きくズレた物を目にしちまった。
ダンボール。
ブルーシート。
ドラム缶。
おい。これって……いわゆる。
ダンボールハウス、か?
ホームがレスな奴らの建築物。
呆気に取られていると、水本がドラム缶の中から、ひょっこりと現れた。
水本
「ひ、酷いですよ、伊月さん。僕の秘密を、見ちゃったんですねー。」
棒読み。
おい、こんだけ茶番に付き合わせといて、その演技力かよ。
水本はドラム缶から出てきて、俺の手を取った。
水本
「あの……見たからには、せ、責任を、取ってもらわなくちゃ、ですよ。」
まさか。
おい。
まさかな。
水本
「ぼ、僕もOpeners相談所に、住まわせなくちゃ、ダメですよっ。ね、ね?」
水本は、なにもかもが上手くいったことに喜びつつ、俺の様子を真剣に窺っている。
もう、完全に脱力しきった俺は、虚空を見つめる。
漏れ出る言葉は、たった一つだけだった。
伊月
「……冗談だろ。」
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