-10-「犬殺」
曰く、彼は
三中
「警察は大事になってからじゃないと動いてくれないんですよ。動物愛護団体にも言って動いてもらってるんですが、手口があまりに奇妙で……。
オカルトじみた事件専門なんでしょう? あんまり信じてはいませんが、この際です。あと、未成年にチラシ配らせるのは如何なものかと。」
三中は3枚、チラシを持っていた。どれもシワが寄っている。
伊月
「あぁ。3枚ももらっちゃって、全部手汗でよれちゃって。
良い感じの子たちでしょ。」
三中は不審になりはじめた。
こいつ、うちの子どもらに見事に引っかかったな。
三中
「か、かわいかったですね。特に2人は犬みたいに駆け寄ってきて、ふふ。」
超気持ち悪いニヤケ顔を披露しやがる三中。
あ、こいつぁやべぇ。なんの事件か知らんけど、犯人こいつ。決まり。
必死に引きつり笑いをしていると、3人が戻ってきちまった。
木島
「ただいま帰ったー!
お、さっきのおじちゃんではないか!いらっしゃい!」
三中は急に紳士的な微笑みを作り、木島たちに向けた。
三中
「やぁ、ごきげんよう。」
伊月
「お前ら、悪いこと言わないから逃げたら?」
木島
「なんでだー?
Openers相談所、初のお客さんだ。丁重に扱いたまえよ。ささ、私たちも話を聞こう!」
水本
「なんでもご相談くださいっ!」
眉をしかめる俺に、八幡は薄ら笑いしながら近づき、耳元で囁いた。
八幡
「なぁに。手ぇ出してきたら撃ち殺しますんで。旦那はドンと構えなすってくだせぇ。」
それはそれでヤベェだろ。
不安の種がそこら中に撒かれたOpeners相談所。場所をカウンターから移し、テーブル席へ。
木島
「で、用件は?」
三中は襟元を正す。用件は真面目なようで、それが不幸中の幸いか。
三中
「最近、野良犬が不審死を遂げています。まだ3件ではありますが……地域の犬愛好家たちは、自分の可愛い家族が毒牙にかからないか不安な日々を過ごしています。
つきましては、犯人の特定……までは求めませんけど。」
木島
「求めていいのだぞ!がんばるから!」
水本
「はいっ!全身全霊ですっ!」
三中
「じゃあ、凄く求めます。」
紳士的な微笑みの中に、ついに邪悪な歪みが出てきた。正体現したね。
八幡
「やりやすかぁ?」
八幡は、いつの間にかテーブル下に隠した手の中に拳銃を手にしていた。小型の、子どもでも持てそうなの。
八幡
「これね、気になる?気になるでしょ。ベレッタナノっていうんだなこれ、かっこいいでしょ。にへへ。」
なに笑ってんだ、この子。
犯人こいつ。快楽銃殺犯。
俺は八幡の手を制止し、まぁ待てと促した。
伊月
「分かりやした。じゃあ犯人探しでもして証拠を1つでも持ってくれば良いすかね。」
三中
「左様で。」
伊月
「んで、その奇妙な手口っつーのは?」
三中はカバンからファイルを取り出した。それを俺に渡す。
三中
「見てください。私には見てられません。」
ためらいもなく、俺はファイルを開く。
うわ。グロだ。
しかし、こりゃ並大抵のグロではない。
なんだこりゃ。なにしたらこんな死体が出来上がるんだ?
赤黒い箱の上に、白色の熊の置物。
なんか分かっちゃうな。これ、箱の中は肉、置物は骨だな。
横に座っていた八幡は、八重歯を光らせてにやけながらそれを見ている。犯人こいつ。
木島も見てしまったようで、あっという間に顔面蒼白になった。
水本は興味と恐怖が戦って行ったり来たりしていた。
三中
「3件なので、確たる傾向があるとは言い切れませんが……どれも早朝に見つかってます。肉の入った箱は近くのホームセンターで買われたアクリル製水槽のようです。
狙われた犬は大型犬2匹、小型犬1匹。どんな殺され方をしたのかは……ここまでぐちゃぐちゃだと、もう……。」
あぁ、こりゃあダメだ。木島と水本が虚ろになってきた。
伊月
「情報どうも。ちとうちの子ら、もう限界っぽいっすわ。まーなんだ、密に連携取っていきましょうや。
あ、今回はサービスで着手金0の成功報酬25万。あとは出来高で色付けてくださいよ。」
三中は了承し、即席の契約書にサインをした。
そして三中は、子どもらに申し訳なさそうに去っていった。
一発目が犬の猟奇殺害事件かよ。重いもんだ。
この街、そんな治安悪かったっけ。
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