174
「ありがとう捺希さん。でも今日新しいスタッフが配属されるし、錦折さんも配属になれば、私は商品部に戻るしかないんです。私……エステサロンでヘマばかりして、商品部に左遷されてしまったけど、やっぱりエステシャンという仕事が好きだから。美容師の仕事も素晴らしいけど、私はエステシャンに戻りたい。だから蓮さんや鳴海店長の力を借りることにしました」
「類……」
「ずっと、私はダメなんだって、ネガティブなことばかり考えていました。でもbeautiful magicに来て間違いだったと気付きました。みんなきらきらと輝いていたから。私もみんなみたいに輝きたいと思った。こんな気持ちになれたのは、みんながいたから……」
「類……」
「いつまでここにいられるかわからないけど。精一杯頑張ってみたいんです」
「……わかった。類がそこまで言うなら僕も協力するよ」
「ありがとうございます」
「捺希、何メソメソしてるんだよ。ほらさっさと開店準備」
「あっ……いけない。鳴海店長、新しいスタッフは午後から出社ですよね?」
「そうだ」
「類、開店準備に行くよ」
「はい。行ってきます」
私は諸星とシェアハウスを飛び出す。
決意を新たにした朝……。
太陽の日差しがいつもより眩しく感じられた。
◇
午前中は常連客の予約で、比較的店内は落ち着いていた。ブティックでは新作のスーツやパーティードレスも即完売し、本店に追加注文をする。
午後になり、美容室に一人の男性が現れた。手には黒いボストンバッグ。グレーのスーツにブルーのネクタイ、ピカピカに磨かれた黒い革靴。
「いらっしゃいませ。新規のお客様ですか? 申し訳ございません。当店は予約制で、本日の予約はもう埋まっていて……」
諸星が必死に来店客に詫びている。観葉植物の陰になり、男性の顔は見えない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます