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「ありがとう捺希さん。でも今日新しいスタッフが配属されるし、錦折さんも配属になれば、私は商品部に戻るしかないんです。私……エステサロンでヘマばかりして、商品部に左遷されてしまったけど、やっぱりエステシャンという仕事が好きだから。美容師の仕事も素晴らしいけど、私はエステシャンに戻りたい。だから蓮さんや鳴海店長の力を借りることにしました」


「類……」


「ずっと、私はダメなんだって、ネガティブなことばかり考えていました。でもbeautiful magicに来て間違いだったと気付きました。みんなきらきらと輝いていたから。私もみんなみたいに輝きたいと思った。こんな気持ちになれたのは、みんながいたから……」


「類……」


「いつまでここにいられるかわからないけど。精一杯頑張ってみたいんです」


「……わかった。類がそこまで言うなら僕も協力するよ」


「ありがとうございます」


「捺希、何メソメソしてるんだよ。ほらさっさと開店準備」


「あっ……いけない。鳴海店長、新しいスタッフは午後から出社ですよね?」


「そうだ」


「類、開店準備に行くよ」


「はい。行ってきます」


 私は諸星とシェアハウスを飛び出す。


 決意を新たにした朝……。

 太陽の日差しがいつもより眩しく感じられた。


 ◇


 午前中は常連客の予約で、比較的店内は落ち着いていた。ブティックでは新作のスーツやパーティードレスも即完売し、本店に追加注文をする。


 午後になり、美容室に一人の男性が現れた。手には黒いボストンバッグ。グレーのスーツにブルーのネクタイ、ピカピカに磨かれた黒い革靴。


「いらっしゃいませ。新規のお客様ですか? 申し訳ございません。当店は予約制で、本日の予約はもう埋まっていて……」


 諸星が必死に来店客に詫びている。観葉植物の陰になり、男性の顔は見えない。

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