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「捺希、彼は客ではない。今日から当店に配属された朝日川さんだ」


 朝日……川……!?


 まさかね、恭介は営業マンだ。それに美男とは言えない。beautiful magicに配属されるはずはない。


 私は西野のシャンプーをしながら、新しいスタッフが気になって仕方がない。


「朝日川恭介です。広島支店の営業部に勤務していましたが、この度beautiful magicで美容師を急募していると本店人事部の募集要項を見て、自ら異動願いを提出しました」


「営業部? 美容師ではないのか?」


「美容師の資格は持っています。美容室で働いた経験は数ヶ月しかありませんが。腕に自信はあります」


 朝日川恭介……。


 美容師の経験は浅く、営業マンだった恭介がどうしてここに……!?


「西野様お疲れ様でした」


 西野のシャンプーを終え、シャンプー台から美容室にご案内する。


 恭介と目が合い、私は動揺を隠せない。


「類、朝日川さんをシェアハウスに案内して。制服は朝日川さんの部屋に置いてあるから」


「はい」


 制服はもう手配してあるんだ。私なんて手配しても新しい制服くれないのに。


「朝日川さん、シェアハウスにご案内します」


「はい。宜しくお願いします」


 私は恭介と共に店を出た。


「類、久しぶりだな」


「どうして恭介が東京に? しかも美容師だなんて、どうして?」


「さっき店で話した通りだよ。美容師の資格がない類がbeautiful magicで頑張ってるって本店の同僚から聞いて、俺は美容師の資格があるのに、何をしてるんだろうって思ってさ」


「それで……営業から美容師に?」

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