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 その夜、私は香坂にエステをしてもらった。


 リラックスしながらも、香坂の指先の動きを体で覚えていく。


 どうして私にキスをしたのか……。


 それだけはどうしても聞くことが出来なかった。


 ◇


 翌朝、自分の肌に艶と張りが戻った気がした。東京に来て慣れない仕事で肌もカサカサになっていたから。


「艶々、プルプル」


 右手で肌に触れ、幸せな気分になる。


「おはよう、類。あれ? 今朝は何か綺麗だね。肌が艶々してる。化粧品変えたの?」


 諸星が私の肌に触れる。


「久しぶりに気持ちイイコトしたとか?」


 気持ちイイコト?


「しました」


「えー!? エッチなことしたの? 誰としたの!? どこでしたの!?」


「わ、わ、エッチなことなんてしてません! 気持ちイイコトはしたけど、違います! 勘違いしないで下さい!」


「エッチ、エッチって、朝からうっせぇぞ」


 香坂の言葉に、私はカーッと頭に血が昇る。


「だって蓮さん見て。類の肌、艶々のプルプルだよ。超綺麗なんだから」


「当たり前だ。昨夜俺がエステしてやったんだからな」


「……うそ!? 蓮さんが!?」


「鳴海店長から許可はもらってる。類はいずれエステシャンとして復帰させる」


「まじで? 類がエステシャン……。beautiful magicを辞めちゃうの?」


「今日新しいスタッフが配属される。それに錦折だっていつか戻ってくる。捺希も類を商品部の倉庫に閉じ込めたくないだろ。俺は類を必ず陽の当たる場所に戻す」


「……蓮さん」


「鳴海店長も同じ考えだから。夜、個人的にエステのレッスンをする。捺希も協力しろよな」


「僕はしないよ。僕は類をbeautiful magicから追い出したりしない。類は仲間だ。ずっと一緒に働く仲間だ。そうだろ類」


「捺希さん……」


 諸星の言葉に、目頭が熱くなった。

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