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 ――仕事を終えたのは、午後十時過ぎ。諸星と二人でシェアハウスに帰宅する。鳴海店長と香坂は二人で話があると、飲みに出掛けた。


 疲れた体と寂しい心。


 みんなの心の中にぽっかりと空いた大きな穴は、簡単には埋まらない。


「類、僕がいるよ」


 頭をポコンと叩かれ、振り返る。


「捺希さん……」


「一緒に朝を迎えた仲だよ。類は僕に体を見せた」


「うわわ、わ」


 捺希はクスリと笑う。


「何もシてないよ。類は酔っぱらって寝ちゃったから。でもパジャマは夢遊病者のように、僕の目の前で自分で脱ぎ捨てて着替えたんだ。だから類の下着姿も見た。当然モヤモヤしたけど、僕は我慢したんだよ。僕は野獣じゃないからね。寝込みは襲わない主義なんだ」


「……私たち……何もしてないの?」


「ホッとした顔をしてる。残念ながらまだ何もしてない。これから先はわかんないけど。それともシて欲しい」


 諸星はケラケラ笑いながら、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。


「あっ波瑠さんのビールだ。もらっちゃお」


 諸星と私の間に、特別な関係はなかった。


 それだけで、ちょっと安心している自分がいる。


 男がみんな、北麹みたいに女の体だけを求めているわけじゃない。


「きっと公式サイトに書き込みした犯人は北麹だよ。深夜に類と波瑠さんを目撃して嫌がらせをした。二人を見てきっと変な気を起こしたんだよ」


「そうかな。私と波瑠さんのことはあの日来店するまで知らなかったみたいだけど……」


「知らない振りをしただけだよ。他に誰があんな書き込みするって言うの? 類が配属された時から北麹は嫌がらせしていたし。厭らしい目で見てたから」


「……そうですよね」


「北麹は男でも女でも平気なんだよ。寧ろ完璧な女体より、未熟な体をした男か女かわからないような容姿に性的な興味があるみたい。僕にも愛人にならないかって誘ったくらいだから」


 妙にリアルだな。


 北麹の言ったことは本当だったんだ。

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