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◇
仕事を終え全員で掃除をする。
「類は今日はもういいよ。後は俺達でやる」
「えっ? いいんですか?」
「ずっと残業が続いたし、騒ぎで疲れただろう。たまには早く帰れ」
「ありがとうございます。お先に失礼します」
三上のいない二ヶ月間は連日残業だったし、今日来店したお客様からは、公式サイトの炎上も含め苦情にも似たお小言を沢山いただいたし、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積していた。
三上と店内でキスを交わしたことは、勿論誰にも言えなくて、言葉を濁して噓をつき続けた。
この嘘がバレた時……。
私と三上はどうなるんだろう。
ロッカールームで私服に着替えbeautiful magicを出た。
有名人を出待ちするみたいに、四人を見たくて店の前に集まっている数名の女性を避けるように、店の裏路地に入る。
裏路地を少し進んだ場所に白いマンションがあり、そのマンションの中に入って行くゆきさんを見掛けた。
お店とこんなに近いんだ。
マンションの隣にはコンビニ。コンビニに立ち寄ると背後から声を掛けられた。
「君はbeautiful magicの類さんだよね」
「……北麹様こんばんは。お住まいはこの近くですか?」
「いや、接待の帰りにふと立ち寄ったんだ」
「そうですか。お店にまたいらして下さいね。失礼します」
私は幕の内弁当とペットボトルのお茶を掴みレジに向かう。北麹は缶ビールとお摘みを持ってレジに並んだ。
清算を済ませコンビニを出ると、再び北麹に声を掛けられた。
「君が女性だったとはね。確かに私服姿は女だな」
北麹はあれから公式サイトを閲覧したようだ。
「……誤解を招き、すみませんでした」
常連客の北麹を無視するわけにもいかず、私は帰るに帰れない。
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