140
鳴海店長も香坂も、文句言いつつも三上の復帰を喜んでいるようだった。
一人欠け、ぽっかりと空いていた席。忙しくてみんな口には出さなかったけど、やっぱり四人が揃うとパズルのピースが揃ったみたいで嬉しい。
香坂と三上はニューヨークのヘアメイクについて、熱く語っている。
男同士っていいな。
女同士なら、こんな風に語り合えないかも。
「類、見とれてないで食べれば?」
「いただきます」
諸星に見抜かれ、私は目の前にあるチキンを掴み頬張った。
◇
翌朝、目覚めるとすでに珈琲のいい香りがリビングを漂う。
「おはようございます。波瑠さん、すみません」
「類が謝ることないよ。俺は新人だから。はい、珈琲」
「もう……冗談はやめて下さい。誰もそんなこと思っていません」
三上から渡された珈琲。
カップから温かな湯気が上がる。
「いただきます」
二人で飲むモーニングコーヒー。何の意味もないのに、妙に照れ臭い。
「類、蓮さんの指導でシャンプー任されるようになったんだね」
「波瑠さんにも教えて頂いたから」
「俺は類に優しくすることしか考えてなかったから。蓮さんみたいな指導力はないな」
厳し過ぎても、ギブアップだけど。あの時、私は無我夢中だった。
香坂に『beautiful magicの一員だ』と言われたことが、嬉しかったんだ。
「類、俺と付き合ってくれない?」
「えっ? 波瑠さん、まだ酔ってます?」
「類、はぐらかさないで」
だって……
そんなこと突然言われても……。
夢を見ているようで、信じられないし。
私は三上と交際する資格はない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます