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「蓮さん、何でもないです」
三上は意味深な笑みを浮かべ、私を見つめた。
三人でシェアハウスに戻りドアを開けると、諸星が私達を出迎えた。
「遅いよ。まさか三人だけで飲んで来たとか? 狡いな」
「飲んでないよ。ただいま捺希」
「波瑠さん、待ってたんだ。波瑠さんの歓迎会だよ。ワインもビールもウィスキーも酎ハイも用意してあるからね」
「二ヶ月前に送別会をしたのに、歓迎会なんて必要ないだろ」
香坂の嫌味な言葉に、三上が苦笑いした。
室内に入ると鳴海店長が一人で赤ワインを飲んでいた。ダイニングテーブルの上には諸星が用意した食事が用意されている。
「凄いな、捺希が全部用意したのか?」
「もちろん。波瑠さんが戻って来てくれて、こんな嬉しいことはないもの」
諸星は嬉しそうに笑ってる。
「鳴海店長、自分の我が儘でご迷惑をおかけしました」
「波瑠、理由は聞かないが、お前の夢はそんな中途半端なものだったのか」
「いえ、俺は欲しいものを手に入れるために帰国しました。夢を諦めたわけではありません」
「欲しいもの?」
「はい」
「波瑠がそんな言葉を使うとは、意外だったな。チャンスを逃してまでも手に入れたいものなのか」
「はい。どうしても失いたくはなかったので」
三上の言葉の意味……。
それって……?
急にドキドキしてきた。
慌てて缶ビールを掴み、栓を開ける。一気飲みして意識を飛ばそう、そう思っていたのに、私の企みは諸星に奪われた。
「類はダメだよ。ワンワン泣いてバタンキューなんだから。波瑠さんも蓮さんも座って。類はウーロン茶ね」
諸星に促されみんな着席する。鳴海店長はみんなのグラスにワインを注いだ。
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