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「蓮さん、今までゆきさんのお店で飲んでたんですか?」


「店で飲んでないよ。ゆきがこの近くのマンションに越して来たんだ」


 この近くに……?


 ゆきさんの後ろ髪、ほどけてた。まさか……二人はゆきさんのマンションで……。


 三上とのキスシーンと、ゆきさんと香坂のキスシーンが脳内で重なる。


 カーッと熱くなり、思わず視線を逸らした。


「なに卑猥な妄想してんだよ」


「し、してません」


「妄想じゃなくて、お前らは……」


「してません」


「別に誰が誰と付き合おうが、俺には関係ないけどな」


「何もしてません。蓮さんこそ、ゆきさんと……」


「俺とゆき? 付き合えるわけないだろ」


「嘘ばっかり」


「俺とゆきは付き合えないんだ」


「嘘です。本当は付き合ってるくせに」


「ゆきは兄貴の元女房だったんだよ。付き合えるわけないだろ」


 元……女房?


 義理の姉……!?


 ゆきさんと蓮さんが義理の関係だったなんて。でも、蓮さんを見つめるゆきさんは、明らかに異性を見つめる女性の眼差し……。


 香坂と言い争っていたら、笑っている三上の顔が視界に入る。


「相変わらずだな。二ヶ月前とちっとも変わらない」


「それって類が成長してないってことか?」


「ひどい、波瑠さんが辞めた後、私も頑張ったんですよ」


「類、わかってるよ。今日一日類の仕事振りを見て、十分わかった。俺は素直に二人が仲がいいと思っただけだよ」


「誰が類なんか」


「誰が蓮さんなんか」


 うわ、声がハモったし。


「帰国して良かったよ。あのままニューヨークにいたら、手遅れになるところだった」


「波瑠? 何のことだ?」

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