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「おはよう。波瑠、俺にも珈琲くれ」


「おはようございます」


 三上は香坂に笑顔を向ける。二階から鳴海店長と諸星が降りてきた。


「おはよう。波瑠、俺達にも珈琲くれないか」


「おはようございます」


 三上は爽やかな笑顔で、みんなに珈琲を入れる。二人の会話は途切れたままだ。


「波瑠さん、ご馳走さまでした。私、開店準備に行きます」


 みんなの前で、返事をするわけにもいかず。私は珈琲を飲み干し、みんなより一足先にシェアハウスを飛び出す。


 ――『類、俺と付き合ってくれない?』


 嘘でしょう?


 beautiful magicの三上波瑠が、色気ゼロ、女子力ゼロの私に交際を申し込むなんてあり得ない。


 二ヶ月以上海外にいたから、日本人の私を見て血迷ったんだ。


 ――beautiful magicに行くと、店の前には沢山の女性が集まっていた。


 三上が復帰したことを知ってるのかな?


「あの人じゃない?」


「そうだよ、あの人だ」


「あなた、女性なの?」


 ……っ、いきなりその質問?


「beautiful magicは『スタッフは全員美男』ですよね? そのキャッチフレーズ、嘘なんですか。なんで女性が働いてるの? しかも波瑠さんとキスだなんて!」


 三上とキス!?


 どうして知ってるのよ!?


「店の公式サイト見てないの? 炎上してますよ。beautiful magicは虚偽、美男に女が紛れてる。しかも店内でハレンチ行為。それ本当だったんですね」


「違います」


「何が違うの? あなた女でしょ! 波瑠さんとキスしていたんですよね」


 昨夜……

 外で看板が倒れた。


 三上は風のせいだと言ったけど……


 まさか……あの時、誰かに……!?

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