136
「類の傍にいたいと思った。渡米する直前、RUSHIANAの社長に契約破棄を申し出た。当然、社長もすぐにOKはくれなかった。だから『後任が決まるまで』という約束で、ニューヨークに行ったんだ」
「初めから……辞めるつもりでニューヨークへ」
「ニューヨークでの二ヶ月はいい勉強をさせて貰った。刺激的だったし、日本とは違う感性も学んだ。ハリウッド女優のヘアメイクもさせてもらった。貴重な経験だったし、雑誌にも掲載された」
「だったらどうして」
「どうしてだろう。類を蓮さんに渡したくなかったから」
「……蓮さんは私なんて眼中にありません。女としてこれっぽっちも意識なんてしてない。野蛮だし俺様だし、それに……」
フワッと唇があたたかなものに包まれた。
私は目を見開いたまま、何が起こったのか理解できず固まっている。
「……っ」
三上のキスは……
以前交わしたキスよりも情熱的だった。
「……ぁっ」
崩れ落ちそうな体を、三上は両手で抱き締めている。
「波瑠さん……待って……」
繰り返されるキスに……
私の心も体も翻弄されている。
ガタンと外で大きな音がし、窓に掛かったブラインドが揺れた。
三上は私から離れドアを開けた。ドアの外に置いてあった店の看板が倒れていた。
三上は看板を両手で抱え、店内に取り込みドアの鍵を掛け、窓を閉め少し傾いていたブラインドを直した。
「誰かに……見られたのでは……」
「風だよ。今夜は風が強いから」
動揺した私は、モップを掴み掃除をすませる。
「波瑠さん、お先にどうぞ。私が戸締まりして帰りますから」
「類、着替えておいで。待ってるから」
「……はい」
火照る体を冷ましながら、私は制服を着替えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます