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「鳴海店長、皆さん、突然退職して、ご迷惑を掛け申し訳ありませんでした。新人として再び働かせていただきます。宜しくお願いします」
「新人? 波瑠さんを新人扱いなんて出来ないですよ。ねぇ鳴海店長」
「波瑠、閉店後のシャンプー台の清掃と、店の清掃、早朝の開店準備、今まで捺希と類がしていた仕事を、明日から類と二人でやるように」
「はい」
「うわわ、ダメですよ。波瑠さんは私の先輩なんですから」
「捺希と蓮はもう帰っていい。連日の残業お疲れ様」
鳴海店長はレジの前に座り、一日の売上の計算を始め、香坂は諸星の首ねっこを掴み、さっさとロッカールームに入り、私服に着替えて店を出た。
「お疲れ様でした」
私は店内の清掃をし、三上はシャンプー台の清掃を始めた。
三上の背中を見つめながら、私はまだ夢の中にいるみたいだった。鳴海店長が帰り支度を始めても、私と三上は清掃に没頭している。
「お先に」
「お疲れ様でした」
店内に二人きり、嫌な汗が流れ始めた。緊張している私、椅子やモップに次々と躓く。
ガタガタと音を鳴らす私に、ついに三上が吹き出した。
「類、相変わらずだな。落ち着いて」
落ち着いてなんて、いられないよ。
「すみません」
三上はシャンプー台の清掃を終え、ツカツカと歩み寄り、いきなり私をギュッと抱き締めた。
「は、波瑠さんっ!?」
「類に逢いたくて帰国した。ニューヨークに行く前日、店内で蓮さんと類がシャンプーの練習をしている姿を見たんだ」
――あの日……。
やっぱり……三上は店に来ていたんだ。
「ニューヨークでも二人の光景が脳裏から離れなかった」
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