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◇
「おはようございます」
「おはよう類。珈琲くれる?」
「はい」
一番最後に二階から姿を現した三上は、私に微笑みかける。私は珈琲を差し出す。三上は「ありがとう」と微笑み珈琲を口に含んだ。
「俺の洗濯物、捺希がしてくれたの?」
「僕? してないよ」
「違うのか? 俺、昨夜飲み過ぎて何も覚えてないんだ」
「あの……洗濯物は私が……」
「類? もしかして、一階の洗濯機に洗濯物を突っ込んでたのか? あれ、昨日一階の浴室を使ったのかな? ごめん、うっかりしてた」
やっぱり……覚えてないんだ。
「一階の浴室?」
香坂が三上の話に食い付いた。スルーすればいいのに、ライオンの獲物に喰らい付くハイエナみたいだな。
「昨夜シャワーを浴びたみたいなんだけど、全然覚えてないんだ。朝起きたら裸で寝てたから」
は、はだかー……!?
ということは、シャワーのあと裸でシェアハウス内を徘徊したってこと!?
「裸って、もしかして女を連れ込んだんじゃないだろうな?」
香坂が三上を茶化す。
まじで?
いや、女性はいなかったよね?
「まさか、蓮さんじゃあるまいし」
「捺希、どういう意味だ」
「いえ、何でもありませーん」
諸星は笑いながら、トーストにかじりついた。
「波瑠は一人で帰宅したよ」
鳴海店長が救いの手を差し伸べる。どうして知ってるの? 鳴海店長はソファーで寝ていたはず。
「ですよね? 良かった。俺、何かしでかしたかと思ったよ」
三上は安堵の表情を浮かべた。私の裸体は記憶の片隅にもなさそうだ。
嬉しいような。
悲しいような。
でも、ホッとしている自分がいる。
「波瑠、最近飲み過ぎだぞ。何かあったのか? ここはシェアハウスだ。今までは男だけだったが、今は類もいる。自分の行動には気をつけろ」
「鳴海店長すみません。以後気をつけます」
三上は穏やかな口調で、鳴海店長に詫びた。
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