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「ごめんなさい!!」
三上をドンッと両手で押し退け、私は浴室を飛び出した。三上はバランスを失い床に尻餅をついた。
脱衣所でバスローブを羽織り、私は濡れた素足のまま自分の部屋に飛び込んだ。
ドキドキと鳴る鼓動。
呼吸も苦しくて、上手く息が出来ない。
浴室で転んだ三上はどうしたのかな。まさか浴室で酔い潰れて寝てないよね?
もしも打ち所が悪かったら……。
私は大変なことを……。
気になった私はスウェットスーツに着替え、濡れた髪のまま浴室に戻る。
鳴海店長はリビングで寝ている。香坂の部屋のドアは閉まり静かだ。
水でビタビタした廊下をモップで拭き、再び脱衣所に戻ると、シャワーの水音がした。
何だ……
ちゃんと起きてるんだ。
心配して損したな。
そう思いながらも、三上が浴室から出てくるまで心配で、脱衣所のドアの外から動くことが出来ず、その場にしゃがみ込んだまま三上を待った。
◇
翌朝、私はベッドで目を覚ます。
昨夜、三上が心配で脱衣所のドアの外で寝てしまったんだ。
私をベッドまで運んでくれたのは、三上?
部屋のドアをそっと開ける。時刻はまだ午前六時、誰も起きてはいない。
リビングのソファーで寝ていたはずの鳴海店長の姿はなく、脱衣所に行くと三上の姿もなかった。
洗濯機の蓋を開けると、洗濯曹の中には私の衣類と三上の衣類が仲良く絡まっていた。
「波瑠さん酔っぱらって、洗濯機の中に自分の洋服を入れたんだ」
完璧だと思っていたけど、意外とドジなんだな。
思わずクスリと笑う。
乾燥を終えた洗濯物を篭に入れ、部屋に持ち帰り綺麗に畳む。
三上の洗濯物を持ち二階に上がり、三上の部屋のドアの外に置き自分の部屋に戻った。
いくらタオルで隠していたとはいえ、三上に裸体を見られてしまったことは、一生消せないくらい忌まわしい出来事だけど、三上は私同様酔うと記憶を無くす。
昨夜のことは覚えてないはず。それがせめてもの救いだ。
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