【7】美男は唇に触れて楽しむもの

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 二人きりでいると妙な空気が流れ、私は慌てて話をはぐらかす。


「捺希さん、鳴海店長と吉沢カンナさんですが……」


「うん、まだ愛し合ってるよ。多分ね」


「だったらどうして……」


「鳴海店長は意外と保守的なんだ。恋人の裸体は他人に見せたくない。それが仕事でも、芸術でもNOなんだよ。でも吉沢カンナは鳴海店長より仕事を選んだ。一人の男よりカメラの向こうにいるファンを選んだ。でも知名度を得たら、恋人も取り戻したくなった。人間って欲張りな生き物だからね」


「……なるほど」


「有名になった自分を、鳴海店長も許してくれると思ったんだ。だけど、鳴海店長は愛してるからこそ許せないんだろうな。こっそり雑誌見てるくせにね」


「男って自分勝手ですね。女は恋人のために、仕事を選ぶわけじゃない」


「男は愛してる女を独り占めしたい生き物だからね。僕も嫌だよ。恋人の裸体が雑誌に載ったら。エロではなく芸術だとしても見たくないな」


「でも男は浮気するんですよね。女を束縛するくせに、自分は解放する。狡い生き物ですね」


「確かに……、類は意外と鋭いね。でも僕は浮気しないから、安心して」


「……っ」


 結局、話が元に戻ってしまった。


「僕は自分を解放しない。類が束縛してもいいよ」


 わ、わ、見た目は一番安全な乙女系男子だけど、一番危険だよ。


 玄関がガチャンと音を立て、ズカズカと足音が響く。狼の群れのご帰宅だ。


「なんだ、体絡ませてるかと思ったが、何もしてないのか」


 香坂の下品な言葉に、思わずキッと睨んだ。

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