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「これ……捺希さんが?」
「僕が? まさか、僕は類の着替えを見ていたいから、カーテンなんて邪魔なものはつけないよ」
……っ、可愛い顔して、言うことは一番危ない。
私は制服を持ってカーテンの中に入る。私に優しく気を使ってくれる人は、三上しかいない。
昨日の夜だって……
三上が私をソファーに寝かせてくれたんだ。記憶の片隅に、誰かに抱きかかえられた気がする。
「昨日、類また酔っ払って。蓮さんに倒れ込むから、蓮さん固まっちゃって。ちょっと滑稽だった」
「えーっ!?」
私は思わずカーテンを開く。シャツのボタンはまだ完全に止めていない。
「あの、私、波瑠さんじゃなくて、蓮さんに!?」
「そうだよ。顔についてたケチャップ。蓮さんの白いシャツにベッタリつけちゃって。蓮さん今朝何も言わなかった?」
「いえ……。てっきり波瑠さんだと……」
「蓮さん、類をお姫様だっこしてソファーに寝かせ、顔についたケチャップを綺麗に拭いてた」
「あはは……ご冗談を。あの蓮さんが私をお姫様だっこだなんてナイナイ」
「やだ本当に何も覚えてないんだ。類はお酒に飲まれちゃうから、いつか誰かに食べられちゃうよ」
ていうか、諸星はもう私を食べたのかな……?
諸星は私のシャツのボタンをゆっくりと止める。
「あわわ、自分でやります」
「僕は脱がせる方が得意だけど、今日は着せてあげる。類、僕達のこと気にしてるの? 僕達はあの日……」
ガチャンとドアが開き、香坂と三上がロッカールームに入ってきた。
「お前ら、イチャイチャしてる暇があったら、さっさと掃除しろよ」
「はいはい」
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