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「またお前か。なんだこれは!」


「洗濯物が籠の中にあったから……」


「誰が洗濯をしろと言った! 俺の物に二度と触るな!」


「だ、だって……家事をしろって……」


「お前の仕事は、共有スペースの掃除だ! 昨日はカシミアのセーター! あれは四万五千円。ヴィンテージのジーンズ、あれは十万円。この黒いウールのセーターは三万五千円だ!」


 そんなに……高いの?


 私のTシャツ、広島のショップで五十パーセントオフのバーゲンで千八十円だよ。


「合わせて、十八万円。消費税はまけてやる。あとで部屋に持ってこい」


 あとで部屋に!?

 それって、弁償しろってことだよね?


 十八万なんて大金、現金で持ち合わせているはずがない。


「あの……あのあの……」


「いいな、耳を揃えて持ってこい!」


「……は、はい」


 ヤバい、ヤバい、どうしよう。


 銀行に行けば、お金を下ろすことが出来る。


 バッグの中をごそごそと漁り財布を探す。財布の中身は三万円しか入っていない。ウールのセーターも弁償出来ないよ。


 バッグの中を漁っていると、銀行の封筒を見つけた。


 母にもらったんだ。


 ああ、神様仏様、お母様!

 これで私の命は救われる。


 封筒はそれなりの厚みはある。もしかしたら五十万くらいは入っているかも。


 私は封筒に指を突っ込み、勢いよく抜き出した。


「……はぁ!?」


 封筒の中身は現金ではない。宝くじ……!?


『類、これ……。仕事で躓いたら、これで一攫千金して』母が私に封筒を渡した時に言ったセリフだ。


 銀行名が入った封筒だから、てっきりお金だと思ったのに。宝くじだなんて、母らしい気の持たせよう。


 でも、でも、これじゃ払えないよ。

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