20
「またお前か。なんだこれは!」
「洗濯物が籠の中にあったから……」
「誰が洗濯をしろと言った! 俺の物に二度と触るな!」
「だ、だって……家事をしろって……」
「お前の仕事は、共有スペースの掃除だ! 昨日はカシミアのセーター! あれは四万五千円。ヴィンテージのジーンズ、あれは十万円。この黒いウールのセーターは三万五千円だ!」
そんなに……高いの?
私のTシャツ、広島のショップで五十パーセントオフのバーゲンで千八十円だよ。
「合わせて、十八万円。消費税はまけてやる。あとで部屋に持ってこい」
あとで部屋に!?
それって、弁償しろってことだよね?
十八万なんて大金、現金で持ち合わせているはずがない。
「あの……あのあの……」
「いいな、耳を揃えて持ってこい!」
「……は、はい」
ヤバい、ヤバい、どうしよう。
銀行に行けば、お金を下ろすことが出来る。
バッグの中をごそごそと漁り財布を探す。財布の中身は三万円しか入っていない。ウールのセーターも弁償出来ないよ。
バッグの中を漁っていると、銀行の封筒を見つけた。
母にもらったんだ。
ああ、神様仏様、お母様!
これで私の命は救われる。
封筒はそれなりの厚みはある。もしかしたら五十万くらいは入っているかも。
私は封筒に指を突っ込み、勢いよく抜き出した。
「……はぁ!?」
封筒の中身は現金ではない。宝くじ……!?
『類、これ……。仕事で躓いたら、これで一攫千金して』母が私に封筒を渡した時に言ったセリフだ。
銀行名が入った封筒だから、てっきりお金だと思ったのに。宝くじだなんて、母らしい気の持たせよう。
でも、でも、これじゃ払えないよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます