21

 仕方なく私は財布から三万円だけ抜き取り、香坂の部屋に向かった。


 財布の中身は、これで空っぽだ。小銭しか入っていない。銀行に行かないと、昼御飯も食べれないよ。


 隣室に行きドアをノックする。ドアが開き香坂が私の手を掴んだ。


「きゃ……っ」


「オンナみたいな声を出すな」


 ていうか、私は正真正銘オンナです。


「すみません。今持ち合わせが三万円しかなくて……」


「三万?」


 香坂は私が握っていた現金を抜き取る。

 大好きな諭吉を奪われ、私は涙目になる。


「こんなはした金で許されると思ってるのか? 金がないなら、体で返すのか?」


 カ、カ、カ、カラダで返す!?


 香坂はバンッて壁に手をついた。私の心臓は飛びはね、体はガチガチに硬直する。


「俺は巨乳が好きなんだよな。まぁ胸は貧乳でもいいか」


「……っ」


 やっぱり昨日のグラビア雑誌は、香坂のものに違いない。


 エロ、変態、悪魔、野獣、ケダモノ!!


「服脱げよ」


「ひぇっ……」


 そ、そんな、ご無体な。


「早く脱げよ」


「で、出来ません。お金ならあとでお支払いします。当選確実の宝くじでよければすぐに渡せますけど。ひぃ、ひ、広島の女をバカにしないで!」


 威勢よく息巻いたが、恐怖で足の爪先まで震えてる。


 その時、ドアが開いた。

 救世主の登場だ。


「何を騒いでるんだ」


「鳴海店長、こいつが俺の洋服を二日続けて、ダメにしたんですよ」


「類、またやったのか?」


「すみません。弁償します」


「当然だよ!」

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