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 私の部屋に諸星が泊まったことを、みんな知ってるの? まさか!?


 一階にある浴室に入り、パジャマと下着を脱ぎシャワーを浴びた。シャワーを浴びながら、体に異変がないかチェックする。


 寝惚けていた脳が少しずつ記憶を取り戻す。


 歓迎会で勧められビールを飲んだ。そのあといつものように酔って泣いてしまって……。


 そして……寝た。


「あー……ダメだ。肝心なことが思い出せない」


 恭介と付き合っていた時、よく同じことをして叱られたっけ。


『昨日の夜のコト、記憶にないのか?』なんて……恭介に言われたんだ。


 肌の上をコロコロと転がる水滴。水滴は体から転がり落ち排水口に流れる。


 私も一緒に流れて消えたいよ。


 初日に醜態を曝すなんて、どんな顔をして、みんなに逢えばいいの。


 浴室から出ると洗濯篭には誰かの洋服や下着が入っていた。


 黒のボクサーパンツ。彼氏の下着なら抵抗はないが、他人の下着だ。本来なら触れたくもない。


「うおっ」


 親指と人差し指で端っこを摘まみ、洗濯機の中に下着を投げ込んだ。続けて黒いセーターやシャツも放り込み、洗剤を入れスイッチを押した。


 そういえば、昨日の洗濯物どうしたっけ? 乾燥したはずだけど、そのあとの記憶がない。


 部屋に戻った私は、キャリーバッグから洋服を取り出し、クローゼットに収納する。


 今日も一日寮母だよね。


 ベッドで眠っている諸星に背を向け、そっとパジャマを脱いだ。


「今日はピンクの下着なんだ。昨日の下着よりセクシーだね」


「ひゃぁ……あ」


 諸星の声に思わず下着姿のまましゃがみ込む。


 昨日の下着よりって、やっぱり私は諸星と……!?

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