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 ◇


「本当に野良猫みたいだな」


「だよな」


「でも部屋は綺麗になってるよ。やっぱり女の子だね」


「白い割烹着って、食堂のおばちゃん以外に着る子いるんだ」


「ほんと、年齢不詳だな。しかし、色気なんて微塵もない。本当に女か?」


 ゴニョゴニョと耳元で話し声がする。うっすら目を開けると、私の周辺を三人の美男が取り囲んでいた。


 香坂、三上、諸星……。


 私……三人に襲われる!?


 思わず悲鳴を上げそうになった時、プーンといい匂いがした。


 その匂いにつられお腹がグゥと音を鳴らし、それを誤魔化すために急いでソファーに正座する。


「野良猫のお目覚めだ」


「み、皆さん、お疲れ様です」


「錦織もお疲れ様。短時間でよくこれだけ綺麗にしたな。掃除は合格だ。今から錦織の歓迎会をする。こっちに座れ」


 鳴海店長の声に思わずホッとする。鳴海は常識ある大人、男子寮で女子にセクハラなんてしない。


 香坂とは大違い。


 あの雑誌だって、変態香坂の所有物に決まってる。


「今夜は寄せ鍋にしたから。海の幸たっぷりだよ」


 海の幸……。


 ヤバイな、魚介類は苦手なんだ。


 鳴海店長の呼び掛けにみんなは席に着いた。全員が着席したあと、空席に座る。三上波瑠の隣、髪はサラサラ、茶髪。目元は優しく色白。


「俺の名前は三上波瑠。二十三歳、宜しくね」


 全員の名前は、店にいた時胸につけていた名札で確認した。


 私より一歳年上なんだ。

 甘いマスク、ドキドキする。


「波瑠は全年齢対象だから」


 香坂が三上を見て笑った。


「全年齢対象?」


「どんな女にも優しいってこと。お前ももうグラッてきてんじゃない?」


 確かに……そうだけど。


『お前』って言い方、バカにされたみたいで、なんかムカつく。

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