【2】美男は会話して楽しむもの
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「類の部屋はここだから。必要な家具は全部揃ってるから。冷蔵庫に食材を入れる時は名前書いてね。そうでないとみんな自由に食べちゃうからね」
部屋は綺麗に整理整頓された六畳の洋間。大きな出窓からは太陽の眩しい光が入り、室内にはベッドとクローゼット。小さなテレビとソファーがある。
まるでホテルの個室だ。
「個室は綺麗なんですね」
「みんな自分のスペースは綺麗にしてるよ。共有スペースは放置、ていうか以前住んでいたスタッフが綺麗好きで、彼に全部任せていたから、彼が転勤した途端この有り様なんだ」
美男で綺麗好きだなんて、完璧だよ。
「個室の掃除は不要。プライバシー重視。共有部分だけ掃除して欲しい。本物の錦折塁が配属になるまでお願い」
「……はい」
本物の錦折塁は美男で、優秀なヘアメイクアーティスト。彼も今頃理不尽な配属先にガッカリしているはず。
転勤難民の私、錦折塁もbeautiful magicと聞けば目の色も変わるだろう。
これは意外と、早く決着はつくかもしれないな。
もう腹をくくるしかない。
ここで暫く頑張る。
「類」
「はい」
諸星は私に顔を近付けた。
思わず仰天する私。
童顔だが、目はくりっとし、睫毛は長く可愛い顔立ち。形のいい唇が目の前にある。
「な、な、捺希さん!?」
「くすっ、類は意外とウブなんだね。綺麗だから経験豊富だと思ったけど、違ったんだ」
「経験豊富だなんて、と、とんでもない」
「わかってると思うけど、ここは男子寮だから。お店の顔と素顔はみんな違う。気をつけてね、仔猫ちゃん」
「は、はい」
諸星は私の頬にチュッとキスをした。心臓がキューンと締め付けられ、鼓動がドキドキと音を鳴らした。
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