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「待て、君に選択肢はない。決めるのは俺だ。錦折塁は美容師の資格を持つ優秀なヘアメイクアーティストだ。即戦力になる人材だった。その彼が当店に配属されるまでは、猫の手も借りたいくらい忙しい。君は人間だろ、猫よりはマシだな」
「店長それはどうかな。beautiful magicは技術と、スタッフは全員美男を売りにしている店だ。お客様は俺達に逢いに来ているも同然。男の中に女子を入れるのはちょっとな。しかも彼女は美容師の資格もない。何の役にも立たない。猫の手以下、それなら四人でやった方がマシだよ」
「確かに美男を売りにしているのに、女の子はちょっとNGかな。セレブな女性客も嫉妬するし」
三上が香坂の意見に同意する。
「君は何の資格もないのか?」
鳴海店長が腕組みをし、私を見据えている。そんな怖い顔をしなくても、場違いなことくらい自分が一番わかってるよ。
「広島ではどの店舗に配属されていた?」
「エステサロンです」
「エステ? エステシャンなのか?」
俺様な香坂が私の手を掴み指先を見る。
「エステシャン、これが魔法の指? この店はエステはやってないし。店長どうすんだよ? ブティック担当にするとしても、着ている洋服も安物でセンスないし、俺達が完璧にヘアメイクを仕上げても、彼女にミスマッチな洋服を着せられたら台無しだよ」
確かに私はファッションセンスもないし、高級な洋服も持っていない。でもその言い方はないでしょう。
人を小馬鹿にしたような口調。失礼なヤツ。
最も嫌いなタイプだ。
「君、住まいは? 決まってるのか?」
「いえ、社員寮に入る予定でしたが、錦折塁さんが入寮されたみたいでもう空室はないそうです」
「そうか、だったらbeautiful magicの寮に住めばいい。錦折塁の部屋が空いてるからな」
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