ヘアメイクとブティックが一体化し、トータルコーディネートをする。扱っている商品は高級品ばかり。


 テレビやマスコミ、ファッション雑誌にも再三取り上げられ、新規予約はすでに数ヶ月待ちという噂だ。


「こちらがbeautiful magicの地図です。店長にはこちらから連絡しておきますから」


「……はい」


 ていうか……

 絶対無理。


 広島支店で不要だと切り捨てられたんだ。あのbeautiful magicが私を採用するわけがない。


 広島に出戻りだよ。


 社員寮に入る予定だったのに。行くところもない。今夜はネットカフェ決定だな。


 トボトボと新宿駅に向かい電車に乗る。


 混み合う車内。標準語が外国語のように聞こえ、まるで異世界から迷い込んでしまったみたい。


 これだから田舎者はいやだ。


 電車に揺られながら、自己嫌悪に陥り深いため息を吐いた。


 ◇


 ―青山、beautiful magic―


「お前さ、ココがどんなとこかわかってんの?」


 俺様系イケメン、香坂蓮こうさかれん


「何で女の子なの?」


 癒し系イケメン、三上波瑠みかみはる


「わぁ、可愛い。類って呼んでいい?」


 乙女系イケメン、諸星捺希もろぼしなつき


「仕方ない、君で我慢するか」


 クール系イケメン、鳴海零士なるみれいじ


 私の目の前にズラリと並んだイケメン。全員がヘアメイクやネイリストの資格を持つ。


 妖艶なくらい美しい容姿、ホストクラブに迷い込んでしまったのではないかと錯覚してしまうくらい、店内はゴージャスで天井にはシャンデリアが輝いている。


 明らかに、場違いだ。


 私の来る場所じゃない。帰るなら今のうち、広島に戻り自宅待機するしかない。


「やっぱり、私には出来ませんっ! 失礼します」

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