第六章 決戦(ケッセン) 11 日比野
千里は何か仕掛けた。
即座に日比野は悟った。
陽花の誕生日は、ついこないだ日比野がうっかり情報提供したので、千里は知っている。それなのに、あえて聞いてきたのは、何か意図があるのだろう。
そして、前と同じく、『陽花』という名前と九月九日生まれとの間に、繋がりがあるようなことを言っている。
それが正しいけど陽花が知らないだけなのか、千里の勘違いなのか分からない。でも、それは何となくさして重要な話ではないような気がした。
こんな、極限の場面で、わざわざ話題に出したことに意味があるのだろう。
しかし、日比野は、陽花と彼女の誕生日との関連性を見出せていない。少なくとも語呂合わせではないことは分かる。
優梨自身もどこか腑に落ちない表情である。かえって、優梨を混乱させているのではないか。そんな懸念がよぎる。
「大城さん! ファイトー!」
千里は、蘇芳薬科のメンバーのもとに戻って、優梨を応援している。
「お待たせしました! 問題を再開しますが、ここからは、早押し問題や解答一斉オープンの書き取り問題も交じってきます。では、第五十一問! 『デュアルアンサー早押し』です!」
まだ『デュアルアンサー早押し』は尽きていなかった。新たに作ったか分からないが、ここでいきなり早押し問題にしてしまうと、最悪この問題、長くてもその次の問題で、必ず試合終了となる。そんな露骨な真似は、さすがにしてこなかった。
「歴代の日本の総理大臣には、二人『アベ』総理が存在……」
ここまで上り詰めた二人にとっては、かなり容易な部類の問題になるだろう。場を繋ぐだけの問題で、白石、優梨の順で、
その後も第五十四問まで『デュアルアンサー早押し』が続いたが、点数の差は開かない。両者正解し続けている。優梨も、白石に臆することなく、毅然とした態度で正答し続けている。
一つ気になったのは、問題が全体的に易化しているような気がした。だから両者正解し続けて差が開かないような気がしている。ひょっとして、本当に問題が枯渇して、比較的に簡単な問題しか残っていないというのか。
しかし、ここでとうとう均衡が破られるときが来た。正確に言うと、運営側が強制的に均衡を破りに来た。端的に言うと、『デュアルアンサー早押し』ではなく、通常の早押し問題に切り替えられたのだ。この問題では、解答を先に許したチームから、否が応でも点数を一つ減らされるシステムである。
「第五十五問! ここからは通常の早押し問題です! モニターをご覧ください。モニターの数字を見て、四角に入る数字を答えてください」
画面に七つの数字と一つの□が表示される。それが矢印で、円を描くように繋がれている。法則を見出す問題だが、一秒ほどしかまだ経っていないところで、ボタンが押される音がした。
「滄洋女子高校複合チーム、大城さん!」
優梨の解答のタイミングがとうとう来た。白石からポイントを引き剥がして、同点に持ち込めるか。日比野は祈った。
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