転校生1
学校に到着し、自分の教室のドアを潜るとクラスの半分くらいがすでに登校していた。
僕の学校は県立学校なので少し遠くから電車で来る人とかもたくさんいる。そんな人は大体電車の時間があり、登校してくるのが早い。
窓側の一番後ろに位置する僕の席に座ろうとした時、おかしなことに気付いた。
僕の席の後ろに、席が一つ増えていた。
窓側という心地よい風を浴びる事の出来る勝ち組ポジションを手にしている人は六人。つまり窓側の席は六つだけしかない。それなのに現在七つもある。
僕はしゃがんで、机の高さに視線を合わせる。
全員、机の正面の部分に名前のシールを貼り付けている。
誰だよ。こんなくだらない悪戯したの。
これで誰の机かが判明すると思ったのだが、この机にはシールが貼っていなかった。貼っていないという事はこの机は誰の机でもない。
あれ? 一体どういうことなんだ。誰かが準備室とかに閉ってある机を運んできて、この場所に置いたのか
だとしたら、そこまでするのに何の意味がある。正直、この悪戯から得られる反応は、消費した労力に見合わないと思う。
机を見つめて考え込んでいる僕の姿は傍から見ると変な野郎に見えたのだろうか。二人の生徒が僕に話しかけてきた。
「あんた何してんの?」
二人の生徒のうち、僕に話しかけてきた長い髪を後ろで纏めて括っている女の子――歌凛(かりん)は、僕の思った通り明らか変なものを見るような眼で見てきた。
そして短髪の男の子――幸長(ゆきなが)の方は、その光景をヘラヘラ笑いながら眺めていた。
ちなみにこの二人とは小学校一年生の頃からの仲良しで、僕の幼馴染を含めた四人でよく遊んでいた。
「え、いや、席が一つ増えててびっくりしたというか怖いというか、何の目的があるんだろうなって……」
その言葉に歌凛は驚いたような表情を浮かべ、
「え? それ本気で言ってんの?」
「うん。そうだけど……。僕、何か変なこと言ってる?」
普通、机が増えていたら気にならない? 気になると思うんだけど。
歌凛は呆れたように溜息をつき、そして状況を理解できていない僕に説明をしてくれた。
「あのね、今日このクラスに転校生が来るの。それでその席はその子の席なの。まさかこの情報を知らない人がいたなんて、ほんとびっくりだわ」
へー、転校生が来るのか。初耳だな。
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