第5話

ドーバー海峡で大英帝国海軍の空母クイーン・エリザベスに乗り換える。ポーツマスへと帰港するクイーン・エリザベスに便乗しポーツマスからヘリでロンドンへと帰る。


「帰還した。陛下。」


「おかえりなさい。ティアは?」


苦笑いで、返答する。女王は俺の言う気の無い意思を読み取りそれ以上問うて来ない。報告書を手渡し、礼儀を失した行いと承知ながら女王の私室から引く。

与えられたロンドン郊外の邸は古びている。かつては、大英帝国の対化物専門の国教会の1部門の本部が置かれていた。彼らは今俺のような化物が住んでいると知ればどう思うのだろうか?己の眷属であり真祖に準ずる程度の力を持つメイドは恭しくある。


「彼らはどう思うのだろうか?」


「は?」


「構わん。気にするな。」


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昔を思い出した。俺は別に祖国の為に戦った訳じゃなかった。大陸派遣軍なんか行きたくなかった。臆病者と謗られようとも構わなかった。俺が戦ったのはセレスティアをティアを守る為だ。とある、役人は参加する事に意義があると言った。参加しない臆病者に価値はないと断罪した。ピエール・ド・クーベルタン男爵の言葉だ。だが、明らかな誤用、クーベルタンは勝つ事ではなく、参加しただけで意味が有ると言っただけだ。だから、俺は強制されるのが嫌いだ。


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「先生?」


ドアが遠慮がちにノックされる。外は既に明るく、夜は開けた。


「今行く。食堂で待っていろ。」


俺は何故存在しているのだろう。いつまで存在し続ければ良いのだろうか。


「おはよう。」


「おはよ。」


昨夜用意された、朝食は既に冷めて居たが、何でも俺にとって変わらない。


「エリザに今日は教えて貰え。」


我が道は荊棘。人は死ぬ為に生きる。俺は、私は死なずに無限に無駄に歩む。それは、進むのか否、下がるのだろうか、それも否。歩めない、私はあの時超人として作られた時既にラインハルト・ティルボードは死んだ。

……………………………………………






21.March.1940


フランス・アラス


捕虜170名。第一期超人計画被検体に指定。


成功1、失敗169


成功体を呼称アーカードを与える。


予定では吸血鬼真祖をコピーしSSドラキュラ計画の対応計画だったが


独立した計画として進行する事を総統閣下は決定した。





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「殺せ!殺してくれ!」


地下牢から嘆きの慟哭は響く。彼は既に知っているのだ。もう既に人では無いこと。己が化物と化した事は。僕は何度も彼を殺そうとした。余りにも苦しそうで、動かずにはいられなかったから。銃弾を叩き込もうと、砲弾が炸裂しようと絞殺 、毒殺、圧殺、刺殺。効果はなく 、為す術もない。僕は今日、彼の前で銃殺される。

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