第24話いとこと俺と前日と
夕方頃、俺と結愛は目を覚ました。
もう大荒れだった雨も大分落ち着いていた。
それでも窓をゆらす程の風は吹いていて、窓が大きく揺れるたびに結愛は体をビクつかせていた。
「猫かよ。」
「だって、びっくりするもんはびっくりするもん。」
俺は近くに落ちていた小説の栞を、結愛の目の前にちらつかせた。
「猫じゃない!噛むよ?」
「ほら、やっぱり猫だ。人間は人の事噛まないぞ?」
「にゃー!!」
結愛は俺の腕に噛み付こうとしてきたが、俺はすぐに立ち上がり避けた。
立ち上がると同時に明日結愛が帰る事を思い出した。
「そういえば明日いつ帰るんだ?」
「決めてない!」
「え?」
「特に決めてないよ!」
「そうか、でも帰る準備はしとけよ。」
俺は咲良にも結愛が帰る日を連絡して伝えようとした。
伝えようとしたが、俺は咲良からの告白を思い出し、連絡が出来なかった。
「結愛、咲良にも帰る日教えといてやれよ?」
「そうやって言うならお兄ちゃんが連絡したらいいのに。」
「俺の事じゃないからな。」
そう誤魔化し結愛に連絡をうながした。
俺は自分の部屋を見渡した。
机の上にには結愛の化粧品、部屋の至る所に結愛の物が溢れていた。
「なーそろそろ片付けろよー?」
「うーん。」
スマホをいじりながら結愛は返事を返した。
「何かうちに忘れても送らずに捨てるからな?」
「片付けるよー。」
やる気のない返事を聞き、時計を見ると夕飯にはいい時間になっていた。
「さっ!俺は夕飯の準備するぞ!」
「えっ?もう食材ほとんど無いよ?」
確かに冷蔵庫の中にはほとんど何も入っていなかった。
「まー任せろ!」
「何作るの?結愛も手伝う!」
「1人で大丈夫だよ、結愛は帰る準備しときな!」
俺はキッチンに向かい、結愛は「私だってできるのに…」等ブツブツと呟いていた。
キッチンに立ち、冷蔵庫を見た。
使いかけのベーコンと卵にチーズと調味料しかなかった。
冷凍庫には結愛の作ったカレーの残りもあった。
「んー、まーいけるかな。」
そう呟き俺は調理を始めた。
40分程経ちだいたいの工程が終わり結愛の所へ戻った。
「おい、お前何してんだ?」
「んー?写真撮ってるんだよー?」
俺の服と結愛の服を並べて写真を撮っていた。
どうやら着回しを考えているらしい。
「明日帰るんだろ?準備しとけよ。」
少し呆れた様に俺は結愛に言った。
「……さい。」
「なんて?」
「うるさい!」
いきなり結愛が怒鳴ってきた。
「なんで帰るって言うの!?私はお兄ちゃんと一緒に遊んだり話したりしたいのに!」
「一緒に料理だってしたいのに、どうして1人でやるの!?」
「せっかく久々に会えたのに、もっと一緒に居てよ!」
結愛は泣き出し、鍵を掛けてトイレにこもってしまった。
俺は何が起きたかすぐに理解出来ずその場で立ち尽くした。
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