第23話いとこと俺と台風と

外は相変わらず大雨が降っていた。

時折、雷なども鳴っている。

雨の音を聞きながら、寝ている結愛の隣で、俺は小説を読みコーヒーを飲んでいた。


俺が起きてから1時間程経ち、煎れたコーヒーが無くなってしまった。

片手が空き、隣の結愛の頭を軽く撫でた。

あの大雨のキャンプの時と比べたらびっくりするほど大きくてなっていた。

「毎年会ってるけど、あれから5年以上は経ってるんだよなぁ。」

頭を撫でながら呟くと、結愛が目を覚ました。

「あっ!ごめんな、起こしちゃったな。」

俺は撫でた手を止めた。

「ううん、おはよ。それより、もっと撫でて?」

こっちにきて、わがままを言う事は何度かあったが、甘えてきたのは初だった。

俺は言われた通りに結愛の頭をもう一度撫でた。

凄く幸せそうな顔をしながら結愛は目を閉じた。

「お腹は空いてないか?」

「大丈夫だよ?お兄ちゃんは?」

昨日の疲れであまり動きたくなかったので、結愛に合わせる事にした。

「俺もいいかな。」


「ねぇ、昨日ってどうやって帰ってきたの?私あんまり覚えてないんだよね。」

電車では寝て俺の背中では寝て覚えてるはずもなかった。

「俺が家までおぶって帰ってきたんだよ。」

「えっ!ごめん、重かったでしょ?」

「そんな事ないよ、昔と変わらない。」

「…ありがと。」

少し顔を赤くしながら結愛は言った。


「そーだ、学校は楽しいか?」

「なんで?唐突だね。楽しいよ!」

確かに唐突すぎたが、あまりこう言った会話が出来てなかったと思った。

「部活は?陸上続けてるのか?」

「うん、結構厳しいけど楽しくやってるよ。」

「そりゃー良かった!」

結愛は運動とかは嫌いだったが、小5の頃に俺の陸上の大会を見て始めたらしい。


少し話して結愛は体を起こした。

直後、窓の外が強く光りタンスが倒れたような大きな音がした。

「おっ、近く…」

俺が言葉を発するよりも早く、結愛は俺の胸に飛びついてきた。

「大丈夫か?」

結愛は小さく首を横に振った。

俺は結愛の頭を撫でながら優しく胸に抱き寄せた。

雷はずっと鳴り続けていた、同時に雨の音もどんどん強くなっていった。

「結愛、そろそろどいてくれよ、なんも出来ないだろ?」

次は大きく首を横に振った。

「うーん、どーしたらいいんだ?」

体を俺に預けている結愛はいいが、預けられている俺は背もたれもない場所で少しつらかった。

「もう一回寝るか?」

小さく首を縦に振った結愛を見て、少し顔をのぞいて見た。

「おいおい、泣くなよ。」

「…だっでぇぇ、怖かったんだもん。」

女の子らしいなと思いながら俺は結愛を寝転がした。

「ねぇ。」

俺の手を引っ張ってきた。

「なんだよ?」

「一緒に寝るの!」

相変わらず外は光っている、それを見た結愛はまた涙目になっていた。

「わかったよ。」

俺は結愛の隣に寝転がった。

「ありがと。」

満足そうな顔をして俺の胸に顔をうずめた。

「お兄ちゃん!」

「なんだよ?」

「…大好き!」

「うるせぇ。はよ寝ろ。」

「私の事は?」

「は?」

「私の事はどうなの?」

訳のわからん質問をしてきた。

調子に乗るとめんどくさいやつだと思いながら俺は答えた。

「可愛い妹としか思ってない。」

「可愛い?結愛の事?でも好きって言ってくれないの?」

「うるさいな、隣でねてやんねーぞ?」

「やだ!ごめんなさい。」

急に甘えてきて、急に泣き出し、急にめんどくさくなり今日の結愛は変だ。

結局、俺と結愛はそのまま寝てしまっていた。

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