第22話いとこと俺と雨と
昼をすぎた頃俺は目を覚ました。
台風が上陸して外では滝のように雨が降っていた。
少し雷の音も聞こえる。
俺は手慣れた作業でコーヒーを作り、小説を準備して、寝ている結愛の隣に座った。
結愛は雨が嫌いだ。
天気として嫌いとかではなく、大雨が結愛のトラウマだった。
俺が高校1年、結愛が小学3年生の時、結愛の家族とキャンプに行った。
仲が良かったってのもあったが、結愛の家は叔父さん以外女性なので、単に男手が欲しかったというのもあり誘われた。
キャンプ設営等、BBQ自体はなんなく進んでいき凄く順調だった。
問題が起きたのはその日の夜だった。
天気予報には出てなかった雷雨がきた。
キャンプ場で停電が起きかなりの豪雨と雷鳴が轟いていた。
俺と叔父さんは念の為取っておいたバンガローに結愛と妹と結愛のお母さんを連れていき、テントに入れてた荷物を取りに行った。
暗闇と大雨の中、1つの懐中電灯の光を頼りにテントを探した。
道は大体覚えていたが、少ない灯とぬかるんだ道と雨で遮られる視界のせいでテントに辿り着くのにはすごく困難だった。
10分程で着く道も、倍の20分程かかって着いた。
「テント潰れてますねー。」
俺は叔父さんにそう言い、流されてる荷物がないか確認した。
2人で話し合った結果テント以外の荷物を屋根のある近くのBBQ場に避難させる事にした。
幸いな事に俺ら以外にテントを張ってる人、BBQをやってる人はいなかったので、荷物が盗まれる心配はなかった。
懐中電灯が1つしか無かった為40分程かけて荷物を移動した。
もう既に1時間もたっていた。
「どうしますか?」
「とりあえず心配してると思うから荷物から貴重品だけ出して戻ろう。」
「了解です!」
2人はびしょびしょになった荷物からいくつかの貴重品を取り出しバンガローに向けて歩いた。
バンガローに戻り結愛の妹は寝ていたが、結愛は起きていた。
「お兄ちゃん!!!!」
結愛はびしょ濡れになった俺に飛びついてきた。
「なんでいきなり俺なんだよ…。普通お父さんだろ。」
結愛の頭を軽く撫でた。
その瞬間、結愛は豪雨でも聞こえる様な声をあげて大泣きをした。
「……ウウッ…。こっ…わかっ…たーー!!!!」
俺は大丈夫だといいながら頭を撫で続けた。
結愛をなだめてるうちに、乾いている服を叔父さんが持ってきてくれた。
乾いてる服に着替えて横になった。
着替えが終わると結愛が近寄ってきて抱きついてきた。
「なんか、ごめんねー。」
結愛のお母さんが謝ってきた。
「いえいえ、可愛いからいいですよ。」
結愛の背中を一定のリズムで叩きながら話していた。
泣き疲れたのか、緊張が解けたのか、結愛はすぐに眠りについた。
「ずっとお兄ちゃん大丈夫なの?って聞いてたんだよ。」
「なんでそこ俺なんですかね?お父さんじゃなくて。」
「女の子なんて年上のお兄さんに憧れるもんだよ。」
「そんなもんなんですかねー?」
「少なくとも結愛は優君の事が好きだと思うよ?まぁ今日は疲れてるだろうし寝よう?」
「そうですね。」
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