第21話いとこと俺とお疲れと

園内に入り結愛はずっとはしゃいでいた。

「今日は結愛ゆめの好きにしていいぞ。」

「私あんまりわからないから案内してよ!」

「この広さをか?」

正直な所、俺も1年に1回来るかどうかのレベルなので詳しくはなかった。

夏休みの割には結構空いていたので助かった。明日の雨予報って事もあるのだろう。

「まー遅くなったけど高校合格祝いだと思って、存分に楽しんでくれよ。お金は全部出すから。」

「遅すぎだよー。うん!でもありがとね!」

結愛は満面の笑みで顔をのぞいてきた。

何秒くらいか見つめてきたので、あまり女の子に慣れていない俺は流石にいとこでも照れて目を逸らしてしまった。

「なんだよ。行くぞ!」

「お兄ちゃん照れてんの?」

わざとやったのか。

「照れてねぇよ!てか、そろそろ手を離せよ。」

最初に結愛に手を引かれてからずっと繋いだままだった。

「結愛の好きにしていいんでしょ?」

「それは…。」

結局、勝ち誇った顔をされてそのまま引っ張られた。


「あーそうだ!お兄ちゃんあれ買おう?」

結愛が指を指す方には耳付きのカチューシャがあった。

「嫌だよ、恥ずかしいし。」

「結愛の好きに…」

「あぁ!わかったよ!」

言わなければよかった。

それでも俺は結愛が楽しそうにしているのを見れて良かった。


それからはいろんなアトラクションを回り、パレードを見て、お揃いでいろんなグッズを買わされて、いつのまにか空は暗くなっていた。


園内のキャラクターをモチーフにした、ハンバーガーが置いてある所で夕飯を食べていた。

「お兄ちゃん流石に疲れた。」

「俺はとうの昔に疲れきってる。」

ようやく結愛の口から疲れたって言葉が出た。

改めて思うと女子高生の体力は恐ろしかった。

「まー、もう一通り回ったしそろそろ帰るか!」

「うん、でも最後にもう一つだけ!」

「まだあんのかよ!帰る体力は残しておけよ!」


ご飯を食べ終え結愛に引っ張られ結愛が行きたいと言った所に着いた。

園内のど真ん中の城の前の広場で待っててと言われ待っていた。

城は綺麗にライトアップされていた。

「お待たせ!」

結愛はキャストさんを連れて戻ってきた。

「一緒に写真撮ろ?」

「最後の一つってそれか?」

「うん!!ずっと動き回ったりで一緒は撮ってないからね。」

結愛はキャストさんにスマホを渡した。

俺と結愛は城の前に立ち撮ってもらう事にした。

「彼氏さんもっと寄ってくださーい!」

「かれ…!」

「いいから早く!」

彼氏じゃないですと言いそびれ結愛に引っ張られた。

カシャッ


写真を撮ってもらい結愛は満足そうに写真をずっと見返しながら歩いていた。

「危ないから家に帰ってから見ろよ!」

「はーい」

「よし!混み出す前に帰るか!」

俺と結愛は手を繋いだまま駅まで歩いた。


電車に乗り1席空いていたので結愛を座らせた。

「お兄ちゃん今日はありがとね。」

「おう、急になんだよ。」

「あれ欲しいだあそこ行きたいだわがまま言ってたなーって、思ってさ。」

「俺に会ったらいつもわがまま言うじゃねーか!」

「そんなことないもん!…いや、そうかも…。」

「でも!ありがとね!」

「おう!また連れてってやるよ。」


結愛は帰りの電車で俺の手を握りながら寝てしまった。

乗り換えをする度に起こし、最寄りの駅に着く電車では2席空いていたので俺も一緒に座った。

俺は隣で寝ている結愛を見て何故か咲良さくらと付き合っていた時を思い出した。


最寄り駅に着き結愛を起こした。雨が降っていた。

「おい、着いたぞ。歩けるか?」

「うーん。」

寝ぼけている。

タクシーで帰ろうと思ったが、急な雨だったのでタクシーの列はかなり伸びていた。

「…まじかよ。」

仕方ないのでコンビニで1番大きい傘とレインコートとついでにビールを買った。

全く動けなそうにしている結愛にレインコートを着せて、傘を開き、家までおぶって帰る事にした。

「結愛、おぶって帰るから背中乗って。」

「…うん。」

いつまでも子供だなぁと思いながら俺は結愛を背中に帰路についた。

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