第18話咲良と俺と…

「いやー美味しかったねー」

咲良さくらが食器を片付けながら言っている。

お客さんに片付けさせるにはいけないと結愛ゆめは言ったが、咲良は昔付き合っていた時の癖でそそくさと洗い物をしていた。

結局、結愛もなかなか頑固なので食器を拭きながら咲良と話しながら片付けをしていた。

2人で済ませた為、俺がタバコを吸って戻る頃にはほとんど終わっていた。


「よし!じゃーあんまり長居するのもあれだし私は帰ろうかな」

「もう帰っちゃうんですか?もう少しお話したかったです!」

結愛は相当咲良の事が気にいったみたいだった。

「結愛ちゃんまだこっちいるんでしょ?また遊ぼ?」

「嬉しいです!今度は一緒に出かけましょ!」

「そーだね。じゃー連絡先だけ交換しよっか、ゆうがいじわるしてきたらいつでも連絡して」

笑いながら咲良はそう言った。

「いじわるってなんだよ!俺は2人をいじめた事ないわ!」

俺はすかさず突っ込みをいれたがスルーされた。


そんな事を話しているうちに咲良は帰る支度と結愛との連絡先を交換していた。

俺は夏でも夜の外は少し冷えるので薄めの上着を用意した。

「家まで送ってくよ。」

女の子を1人で返す訳にはいかないので、俺は言った。

「別に大丈夫だよー。って言っても優は来るよね…」

さすがに咲良も俺の性格を理解していたのですぐにひいた。

「分かってるなら言うなよ」

「じゃー、お言葉に甘えて。」

「結愛ちゃんまたね!」

「はい!また!」

俺は咲良と一緒に家を出た。


帰り道、いつも通り咲良とたわいもない話をしながら帰っていた。

同じ所で働いてるので、あの客はどうだとか、最近ダーツの調子はどうなのかとか、本当にたわいもない話をしていた。

咲良の家まで半分すぎたあたりから会話のネタが尽きてきた。

「そういえば、結愛の料理はどうだった?」

俺は『美味しかった』とかは結愛と咲良の会話で聞いていたが直接聞いてなかったなと思い聞いてみた。

「うん。すごく美味しかったよ!私山賊焼きなんて初めて食べたかも!」

「…俺も1回咲良に作ったんだが?」

「あれそうだっけ?じゃー結愛ちゃんの方が美味しかったのかな?」

「俺も練習するかな。」


それから咲良の家までは何も喋らずに着いた。

「ありがとな。結愛と仲良くしてくれて。」

「いやいやこちらこそだよ!私もそんなに友達いないし。」

笑いながら咲良はそう言った。

「まー確かにな。でもありがとな、また遊んでやってよ!」

「うん!じゃーまたね!」

「あー。また。」

咲良はマンションのオートロックの鍵を開け、自動ドアが開いた。

俺はいつも通りドアが閉じるまで待っていた。

俺が手を振ると咲良が手を振り返した。

ドアが半分まで閉まりもう1度開く、


「ねー!優!また私と付き合ってよ!」


俺は何が起きたのか、何を言われたのかを咄嗟に理解出来ず固まった。

「…な、」

俺は『何だ?』と聞き返そうとしたが、その頃にはドアも閉じ、目の前にいた咲良も足早にいなくなっていた。

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