第16話いとこと俺と夕飯と

8畳程の部屋に3人も居るのに、エアコンの機械音と外のセミの音しかなかった。

沈黙に耐えきれず俺は喋り出した。

「なんだよ。何か話そうよ。」

急に聞こえた声に2人は少し驚き俺の方を見た。

「お兄ちゃんが変な事言うからじゃん!」

「そうだよゆうのせいだよ。」

全く心当たりがなかった。

「何の事だよ?俺なんか変な事言ったか?」

「思ってる様な人間じゃないって何!?」

咲良さくらが少し怒鳴りながら言った。

「そのままなんだけど?別にそんなに沢山の言葉知らないけどねって意味で言ったけど?」

「なんで声のトーン落として言うの!まぎらわしいよ!」

結愛ゆめにも怒鳴られた。

「ごめんごめん。そんなつもりはなかったんだよ。」

本当にそんなつもりはなかったが少し気まずい空気が流れた。


気まずい空気を変えようと俺はまた喋り始めた。

「咲良、今日は飯はどうするんだ?」

「え?」

俺が急に話し始めたせいで咲良は全く聞いてなかった。

「今日の夜ご飯はどうするんだ?って聞いたんだが?」

「何?作ってくれるの!?」

結愛が居るからなのかわざとらしく言ってきた。

そもそも咲良は俺の家に来ると、昼も夜もいつも絶対に飯を食べて帰る。

「まー別に問題ないぞ。」

結愛の前だったからいつも食べて帰るだろとは言わなかった。

咲良は相変わらず実家で暮らしていてまた1人で食べるのは可哀想だと思い誘った。

「ありがとね、優。いつも気を使ってくれて。」

「急になんだよ。別に気なんて使ってない。」

実際1人はかなり辛いと思う。

「咲良さん、いつもって何ですか?」

結愛がようやく会話に混ざってきた。

「私、両親が忙しくてご飯とかほとんど1人だからね。優が気を使ってよく一緒に食べてくれるの。」

「だから、気なんて使ってない!」

俺のつっこみは「はいはい」とスルーされた。

「そうだったんですね。じゃーお兄ちゃんの味は知ってるんですね?」

「うん?まー結構いろいろ食べさせてくれたよ?肉じゃがとかハヤシライスとか…」


「じゃー今日は私が作ります!」


俺は結愛が作ると言い出したのでホッとした。

いつも2人分しか作らないから、正直3人分作るのはめんどうだった。

「えっ?結愛ちゃん料理出来るの!?すごい!」

「おい咲良、昼のカレーは結愛のカレーだぞ?あと結愛のご飯は丁寧だからうまいぞ。」

結愛はいきなり2人に褒められてすごく照れていた。

「さ、咲良さん何かリクエストありますか?」

照れ隠しをする様に少し早口になりながら結愛が言った。

「なんでもいいの?」

「んー。なんでもって訳じゃないですけど…。」

「じゃー結愛ちゃんの得意料理が食べたいかな?」

個人的にその答えは俺はプレッシャーがかかるから嫌いだったが、俺も結愛の得意な料理は気になった。

「わかりました!じゃー少し食材買ってきますね!」

そう言い結愛は立ち上がりすぐに出かけようとした。


自身満々の返事を見て俺は嬉しかった。

結愛はどちらか言うとおとなしく、あまり自分から進んで何かをやるタイプではなかった。

「結愛!俺も行くよ!」

「ダメ!」

荷物を持つのに付いて行こう思っていたのに、すぐに断られた。

「なんでだよ?」

「食材見たら何作るのか多分バレちゃうもん。」

俺は咲良に腕を引っ張られた。

「なんだよ?」

小声で咲良に聞き、咲良も小声で話し始めた。

「結愛ちゃんは優にも食べてもらいたくて言ってるんだからダメだよ。」


「わかったよ!そのかわり何かあったらすぐに連絡しろよ!」

俺は結愛に俺の財布を持たせた。

「お兄ちゃん心配しすぎだよ。」

「ほんと、優は過保護だね。ここら辺は知り合いばっかりだから何もないでしょ。」

確かにここら辺は知り合いも多く平和な街だから少しは安心できた。

俺の財布にはGPS付きのストラップが付いてるので何かあればすぐに確認出来るようになっている。

「少しくらい心配させてくれよ。気をつけてな!」

「ありがと。小学生じゃないんだから…」

そう言い結愛は買い物に行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る