第15話いとこと俺と名前と

家に着き、楽しそうに話してる声が聞こえた。

「ただいま。」

「「おかえりー」」

「なんか仲良くなってるな。」

2人にそう言うと、

咲良さくらさんいい人だね!」

結愛ゆめに言われた。

悪い人とは友達にならないだろと思いアイスのスプーンを用意しに台所へ向かった。


「アイス買ってきてくれたー?」

咲良がすぐにでも食べたいと言わんばかりに聞いてきた。

「あぁ。咲良はストロベリーで、結愛は抹茶でいいか?」

「えっ!?」

結愛が驚いた。

「ダメだったか?俺のチョコで良ければ交換するが?」

好きな味を間違えたかと思い俺は聞いた。

「ダメとかじゃなくてなんで好きな味知ってんの?」

あまり自慢する程ではないが、人の誕生日、これが好きってのを覚えるのが結構得意だった。友達や恋人に忘れられるのは悲しいものだと思う。

だからこそ、俺はなるべく言われた事、これ良いと言っていた物はなるべく覚える様にしていた。

「結愛ちゃん、この人意外と見てない様で他の人がどうでもいいって思う様な事見てるからね」

「悪いかよ?」

「褒めたんだけどなぁ…」

どうも俺には咲良の言い方が嫌味の様に聞こえた。


「じゃあさじゃあさ、咲良さんの誕生日とか好きな物とか言ってみて!?」

「その前にアイスな!溶けちゃうし外から帰ってきたばかりで暑いんだよ。」

俺は話に夢中で用意を忘れていたスプーンを食器棚から取り出して2人の前にアイスと一緒に置いた。

2人とも嬉しそうにアイスを食べている。

俺は咲良が久しぶりに家にいる事で高校の時を少し思い出していた。


「で?何だったっけ?」

結愛の方を向き再度質問内容を尋ねた。

「咲良さんの誕生日とか好きなものだよ!」

「あーそれか。」

一応これでも何年か付き合っていたし、同じ所で働いているから簡単な質問だった。

思い返す程の質問でもなかったのですぐに答えた。

「誕生日は1998年3月24日、当時桜が東京での開花日の時だな。それが名前の由来で、好きな物は…」

「ちょっと待って!」

誕生日を答えた所で咲良に止められた。

「なんだよ、間違ってないだろ?」

何度も祝った日だし間違えるはずがない。

「そうじゃなくて!なんで私の名前の由来まで知ってんの!?」

「調べたら出てくるだろ、単純な事なんだし。」

人にも物にも地名にも俺は名前の由来があるはずだと思う。

だから俺は付き合っていた頃に生まれ年の開花日と満開日を調べた。

「多分だけど、今年も『良』い桜が『咲』く様にで咲良なんじゃないか?」

俺がそう言うと2人とも唖然となっていた。

少し遅れて咲良が口を開いた。

「…正解。」


「で、好きな物が…」

「私の…、『結愛』の名前の由来は?」

こいつらは人の話を最後まで聞けないのかと思ったが、新しい質問を答えることにした。

「良い『愛』に『結』ばれる様にじゃない?『ゆあ』じゃない理由は『夢』の様な意味を込めてだと俺は思うけど?」

「ちょっと待ってお母さんに聞いてみていい?」

「いや、自分で知らないのかよ…」

結愛は自分の母親に電話をしに行った。


「聞いてきたよ!」

「あーどうだった?」

正直言って結愛の名前の由来に関しては憶測でしかなかったから少し気になった。

「夢の様な愛に結ばれる事を願ってだって。」

俺はほとんどあっている事に驚いたが、咲良が喋りだした。

ゆうすごいね…、完全に正解じゃん。」

「俺も憶測で言ったからびっくりだよ。」

3人ともかなり驚いていた。

「お兄ちゃんに名前を付けてもらえる子供は羨ましいなぁ…」

ふと結愛が呟いた。

俺はそれを聞き逃さずにつっこんでみた。

「なんでだよ。別に他と対して変わらないだろ!」

「えっ?だって色んな言葉知ってそうじゃん?」

言葉を知ってる訳でなく、気になった事を只々調べてるだけだから結愛の思っている人間ではない気がした。

「俺は結愛の思ってる様な人間ではないよ。」

その言葉に2人はすぐに返そうとしなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る